Fish On The Boat

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『魂にメスはいらない -ユング心理学講義』

2014-06-08 14:13:43 | 読書。
読書
『魂にメスはいらない -ユング心理学講義』 河合隼雄 谷川俊太郎
を読んだ。

1979年初版発行の本です。
もう35年も前ですが、今読んでも面白いです。

ざっくりとしてわかりやすく、
河合さんがご自身のしている心理療法のベースとなる
ユングの考えや経験、ご自身の所見などを語っていきます。
谷川さんはあくまでわき役として、質問を投げかけていきます。

これは!と思ったところを引用すると、

___

谷川:普通の人間は、その自己治癒能力ですか、それを不断に働かせているわけですね。

河合:普通は、それが適当にうまく働いているわけです。
   だから深く悩むこともなく深く治ることもなく、みんな生きているわけでしょう。
   いわば普通の人間は自分で自分なりの治療行為をしているわけですね。
   つまりすってんてんになるまでパチンコをするとか、
   途方もない大金を競馬で使ったりするとか、
   それなりにみんな治るための儀式をやっているんですね。
   日記を書くのも、友だちと話をするのもそうでしょう。
   それをもっと凝集し、非常にコントロールされた形でやるのがわれわれの仕事ですね。
___

というところがありました。
僕はここ何年かパチンコや競馬で大勝利したりすっからかんになったりを
何度も経験してきていますが、自己治癒のためと言われると、
腑に落ちるところがあります。
「えーっ?」と思う方もいるでしょうけれど、これはそうだと思いますよ。

また、昨日はAKBグループの総選挙がありましたが、そこで8位だったかな、
こじはること小嶋陽菜さんがしゃべったのがすごく面白かったんですけども、
この本を読みながらだったので、彼女から感じられる母性というものの強さに注意がいってしまって、
「母性」のいいお手本、つまり「母性ってなんだろう」と問う人に対して
この人が母性をよくあらわしているからよく見てみたらと言えるのは、彼女だと思いましたね。
あんなに、おんなおんなしたおんなのお手本のストライクみたいな人って実はなかなかいない。
母性って、いろいろ他人とかと繋がっていくもので「まぁ、なんでもいいじゃないの」
というものだというのですが、その逆のなんでも断ち切っていく心理っていうのも女性には
アニムスという名前で男性的なものとしてユング心理学では言われていました。
アニムスが強いのがよくわかるのがぱるること島崎遥香さんです。
でも、ぱるは横山由依ちゃんと仲良しだったり、孤立しているわけではないから、
病的とは全然違います。ちょっとアニムスが強いっていう。
思春期だとかにそういうのが出てきたりするっていいますから、
若い子だしそういうのがあるのかもしれないですね。

閑話休題。
インターネットでもそのシンボルの意味が辞書みたいに調べられる夢判断のサイトがありますが、
河合さんの心理療法での二枚看板みたいなのが、この夢判断と箱庭療法でした。
しかし夢判断については、たとえば黒猫がでてきたっていうのがあったとして、
夢診断サイトだと、それはこういう意味だっていうように、一対一で対応していたりしますけれど、
河合さんに言わせると、そんなのは違うっていうことになり、その人の現在の状況や夢の状況などによって、
重層的かつ多様に判断しないといけないらしいです。
それはそうだよなぁ、とかねてからWEBの夢診断のシンボル判断に違和感を持っていた者としては、
納得の行った発言でした。

そして「抑圧」の話も興味深かったですね。
子どもが悲しいとか痛いとかいっても、親とか先生だとかは
「痛くないでしょ!」「悲しくないの!」とかってなだめようとしますが、
それがその場限りの対処ではいいように思えても、そういうのが「抑圧」として
心の中、無意識のほうに溜まっていって病んでいってしまう。
言語化すると意識上にのぼってそれは癒しの効果がありますが、
知らず知らずに無意識に、澱のようにたまっていくと、
それは非常に破壊力をもったものになってしまうということです。
また話はAKBになりますけども、このあいだのノコギリでメンバーを襲った犯人は、
きっと、そういう無意識のほうに溜まったものが破壊力を持って、
自分を破壊するか他人を破壊するかのところで、他者を選んでしまったのかもしれない。
襲われた方はたまったものじゃないです。
(襲われたメンバーとスタッフの方は一日も早く元気になりますように)

巻末には谷川さんの詩や散文を河合さんが心理学者的解釈をする
というのが収録されています。
谷川さんの詩はよくしらなかったですが、数篇読んでみてすごく好かったです。
「はしれはしれおちんちん」というのが出てくる「男の子のマーチ」は
楽しくて楽しくて大笑いしそうでした。
散文も含めて読んでいくと、なんだか村上春樹さんに通じるものを感じたりもして、
さては春樹さんは谷川さんからも影響を受けているのかなと思ったりもしました。

この本に書かれていることをまぁ、日本人みんなが7割くらい理解して、ふまえていると、
きっと社会はもう少し生きやすくなると思いました。良書です。


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