Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『幽霊たち』

2016-12-29 22:49:51 | 読書。
読書。
『幽霊たち』 ポール・オースター 柴田元幸 訳
を読んだ。

80年代に発表された、ポール・オースターのニューヨーク三部作第二作です。
舞台は1947年から始まる数年間。

私立探偵ブルーの元を訪れる依頼人ホワイトは、一見して変装しているとわかる。
依頼の内容はブラックの見張りで、ブラックのアパートの真向かいのアパートに、
ブルーのための部屋を借りてあるという。
かくして、ブルーのブラックを見張る日々が始まるのだが……。

前半のすんなりとした運びから中盤の狂気をへて、
後半の難解さへと続いていき、終わっていきます。
130ページくらいの長い短編のような物語でした。

ネタバレになりますが、
物語を書くことに人生を賭ける、生涯をついやす作家という存在は、
もはや自分の人生を生きていない、幽霊なのであると著者はイメージづけています。
そして、解説を読まないと気づきませんでしたが、
ブルーもブラックも、もはや幽霊のような存在になり下がっていました。

特段、この小説を教訓としなさい、と強い調子で語られていはしないですし、
まあ、小説まるごとを楽しみながら、自分と他人、自分とは何なのか、
などなどの思索をしながら読み進めるようなところがあります。
後半部に読解のむずかしさがありますが、
なんとか結末には着地できるひとは多いでしょう。

80年代くらいにポスト・モダンと呼ばれた
考え方や題材をうまく素材としてシンプルな言葉で表現しているようです。
そういうところはよくわかりませんが、
独創的な小説だな、と楽しめるものではありました。
『ガラスの街』もそうだったけれど、読者が混乱するようなところがあります。
でも、おもしろいですが。


Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする