Fish On The Boat

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『喰ったらヤバいいきもの』

2024-08-10 20:42:00 | 読書。
読書。
『喰ったらヤバいいきもの』 平坂寛
を読んだ。

怪物みたいな顔と姿形をしたオオカミウオを兜煮にしたり、隊長2mのオオイカリナマコ(有刺・有毒)をナマコ酢にしたり、バラムツという怪物魚(ワックスエステルという蝋成分だらけの身・とても美味だが必ずひどい下痢をする)を刺身で大量に食べたり、とにかく生きている姿としては怪奇生物だとか不快生物だとかにカテゴライズされ、食べ物としてはゲテモノに分類される生き物を追い求め、喰らう。そのレポート本です。全27生物収録+著者の半生記といった構成です。

そしてそのレポートは、自分が不快な目に遭う可能性の高さに怯まずに敢行される体当たり。著者は、生き物との触れ合い、それも食べるという行為で自らの体内に入れるレベルでの「わかりたさ」に突き動かされるようにそれに挑んでいる感がありました。そしてそのさまを楽しく面白いテンションで伝えようとしている。

「庶民的でとってもおもしろい兄ちゃん」の気質と、「自由な発想と果てしない好奇心をもつ研究者」の気質が、ケンカしつつなのかケンカせずなのかはわからないですけれども、一人の人物の中でコラボするようにしてレポを行い、写真に撮り、文章にしているといった感じもありました。

グロいところもちゃんとカラー写真です。でもまあ、グロすぎはしないか、と40ページくらいまでのところはそう思っていましたが、終盤になってでてきた、オオゲジという15cmくらいのゲジゲジが著者の顔の上を這っているところを自撮りした写真にはタジタジになりました。直視に抵抗がありますよ、こんなの。しかも食べてました。

雑学的に楽しめるんですけど、余談として載っているグリーンランドシャーク。最低でも400年生きて、死んだホッキョクグマなんかも食べるらしいんです。で、自らの肉には猛毒がある。……なんだ、おまえはって思っちゃいますよね。

中盤、著者の半生記を読むと、自分自身の天職たるものはなにか、自分の好きなものと適性の兼ね合い、社会に自分がはまることができるポジションがあるかどうかの探りなどで簡単には行かない人生が見えてくるのです。気持ちを決めて生き物ライターをされているけど、胸の内はまだ混然とした部分があるのではないのかなあ。

だけど、そうだったとしても、果敢にやり抜くがむしゃらさの勢いと、面白い文章を工夫するサービス精神とが、著者のなかで割り切れていない部分があるとしたとしても、それと合体を果たさせて、やっぱりどこか、読んでいてもうわべだけでおさまらず、よくわかんないけど爪痕的なものが読み手の中に残る感じがある記事になっている。そして、そこが、この著者の方の、魅力ある「味」なのでした。

といったところですが、最後にひとつ。沖縄本島の南、八重山列島にはサソリがいるんですね。小笠原諸島にもサソリがいる、と。つまり、日本にはサソリがいる。これはちょっと知らなかったです。




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