読書。
『原発事故と放射線のリスク学』 中西準子
を読んだ。
環境問題や化学物質のリスク面について考えてこられた著者が、
東日本大震災によって発生した福島第一原発事故によって生まれた、
除染問題や放射線の低線量被曝のリスクなどに取り組まれた一冊です。
第一章ははっきりいってむずかしい。
でも、そこをどうにかくぐりぬけると、
比較的わかりやすく福島原発事故の放射線関係の案件について、
まともな知見が得られます。
こまかく理由を追っているのを読者も追っていって
理解することになるのですが、
どうやら甲状腺がんについては大丈夫そうなんですよねえ。
一部マスコミが不安を投げかけるのも、
この本を読んでいたら出てこないと思われもする。
その甲状腺被ばくについて。
チェルブイリでは3000ミリシーベルト以上の甲状腺等価線量だったのに対して
福島では35ミリシーベルトだったと。
これが50ミリシーベルトだとか
100ミリシーベルトだとかを超えると
要注意という世界的な共通認識があるという。
福島のひとたちを見捨てたり差別したりしないために、
本書は多くの人が(みんなが、といいいたいところ)読んだらいいなあ。
まあ、仮に大きなリスクがあったとしても、
差別だとかするべきじゃないのですけど。
また、除染については、
除染って二兆円規模だったんだなあと知りました。
それも、ストレートに除染できていなくて、
紆余曲折を経た後にやりすぎとも言えるくらいの厳しさでもって規定された
○○マイクロシーベルト以下っていうのを遵守する方向でやったから、
本当に莫大な費用になっている。
住民の心情ってのもあるし、むずかしい。
その心情の面では、
サイエンスとメンタルの間で綱引きして膠着するんですな。
メンタルってのはやっぱり人間だからすごく強い。
サイエンスなんぞ信じられない、理解できないというくらいに。
そして、そういう人間心理の土壌に建設された原発であった。
この文脈で言えば、原発的なモノってたくさんでてくるのではないかな。
なんて考えてみたり。
純粋を求めそれをよしとすることと、
リスクゼロを求めそれをよしとすることは、似ていないかな。
リスクを考え、これだけ小さいけれどリスクがあるとわかって
それを背負うことが現実では大事で、
リスクゼロを求めるのは不毛だったりする。
リスクと安全の間はグラデーションで、
そこにこそ現実がある。
リスクと利益を天秤にかけて、
これだけの利益を得たいからこれだけのリスクを背負う
と判断することはとても現実的。
でも、リスクをゼロにしようと躍起になって
ずっと頑張るのはちょっと意味がない。
こういう、リスクと利益で考えるリスクトレードオフという考えは
ほんとうにそうだなぁと思う。
本書では例として2006年に限定的な使用で復活したDDTを例に
リスクトレードオフを説明してくれています。
マラリアで死ぬリスクを考えたら、DDTで病気になるリスクのほうが低いから、
DDTを使おうっていう考え方です。
DDTは強い殺虫剤で、環境問題になった薬です。
というわけですが、
誤植が多いけれども、
ぼくはそういう種類のことはほとんど気にしない性質なので、
その興味深さやおもしろさにひきつけられっぱなしで読んでいました。
良書でしたよ。
『原発事故と放射線のリスク学』 中西準子
を読んだ。
環境問題や化学物質のリスク面について考えてこられた著者が、
東日本大震災によって発生した福島第一原発事故によって生まれた、
除染問題や放射線の低線量被曝のリスクなどに取り組まれた一冊です。
第一章ははっきりいってむずかしい。
でも、そこをどうにかくぐりぬけると、
比較的わかりやすく福島原発事故の放射線関係の案件について、
まともな知見が得られます。
こまかく理由を追っているのを読者も追っていって
理解することになるのですが、
どうやら甲状腺がんについては大丈夫そうなんですよねえ。
一部マスコミが不安を投げかけるのも、
この本を読んでいたら出てこないと思われもする。
その甲状腺被ばくについて。
チェルブイリでは3000ミリシーベルト以上の甲状腺等価線量だったのに対して
福島では35ミリシーベルトだったと。
これが50ミリシーベルトだとか
100ミリシーベルトだとかを超えると
要注意という世界的な共通認識があるという。
福島のひとたちを見捨てたり差別したりしないために、
本書は多くの人が(みんなが、といいいたいところ)読んだらいいなあ。
まあ、仮に大きなリスクがあったとしても、
差別だとかするべきじゃないのですけど。
また、除染については、
除染って二兆円規模だったんだなあと知りました。
それも、ストレートに除染できていなくて、
紆余曲折を経た後にやりすぎとも言えるくらいの厳しさでもって規定された
○○マイクロシーベルト以下っていうのを遵守する方向でやったから、
本当に莫大な費用になっている。
住民の心情ってのもあるし、むずかしい。
その心情の面では、
サイエンスとメンタルの間で綱引きして膠着するんですな。
メンタルってのはやっぱり人間だからすごく強い。
サイエンスなんぞ信じられない、理解できないというくらいに。
そして、そういう人間心理の土壌に建設された原発であった。
この文脈で言えば、原発的なモノってたくさんでてくるのではないかな。
なんて考えてみたり。
純粋を求めそれをよしとすることと、
リスクゼロを求めそれをよしとすることは、似ていないかな。
リスクを考え、これだけ小さいけれどリスクがあるとわかって
それを背負うことが現実では大事で、
リスクゼロを求めるのは不毛だったりする。
リスクと安全の間はグラデーションで、
そこにこそ現実がある。
リスクと利益を天秤にかけて、
これだけの利益を得たいからこれだけのリスクを背負う
と判断することはとても現実的。
でも、リスクをゼロにしようと躍起になって
ずっと頑張るのはちょっと意味がない。
こういう、リスクと利益で考えるリスクトレードオフという考えは
ほんとうにそうだなぁと思う。
本書では例として2006年に限定的な使用で復活したDDTを例に
リスクトレードオフを説明してくれています。
マラリアで死ぬリスクを考えたら、DDTで病気になるリスクのほうが低いから、
DDTを使おうっていう考え方です。
DDTは強い殺虫剤で、環境問題になった薬です。
というわけですが、
誤植が多いけれども、
ぼくはそういう種類のことはほとんど気にしない性質なので、
その興味深さやおもしろさにひきつけられっぱなしで読んでいました。
良書でしたよ。