Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『おとなになるってどんなこと?』

2017-02-22 10:22:00 | 読書。
読書。
『おとなになるってどんなこと?』 吉本ばなな
を読んだ。

すんなりあっさり読めてしまえる分量の本ですが、
読者のこころやあたまには
ちゃんとした質感のモノが残ることうけあい。
ばななさん、実に正直に、実にオープンに、
さまざまな人生の根っこ付近の問いについて答えてくれています。

ひとりのひととして、
その裡に濃い内容を宿していないとここまで書けないし、
言語化や表現力の修練がかなりできていないと
ここまでのくだけたわかりやすい文章にはできないと思う。
出し惜しみなし、されど、
まだ表に出てきていない豊饒さまでをも感じます。

たとえば、「生きることに意味はあるの?」
という問いへの著者の答えは、
ぼくのおぼろげながら持っている答えと
著者の答えはちょっと違うのだけれど、
そういう捉えかたもありますよね、
という感じに腑に落ちるんです。

そういう、対等な立場で話をしてくれているような、
それもこっちが話を聞かせてもらっているのに、
著者が上からでもなく、
強いて言えばちょっと下からかなという立位置で、
ほんものの経験からくる言葉を聞かせてくれるところは、
敬意をありがとうございます、な気持ちになります。

作家友達ならば、
お互いの作品を読めば深い理解を持ちあうことになる、
みたいなところがあったんだけれど、
これは深いコミュニケーションだなあと思った。
僕の場合だと、けっこう綿矢りささんの作品に
そういう理解なのか誤解なのかを持ちます。
そこには怖さも含めて、ですね。

しかし、もしも吉本ばななさんが僕のことを見たとしたら、
たぶん、なにやってんの、もっとがんばりなさい
と喝をいれられそうな気がするんですよね。
それだけ、僕はまだまだ、よくないなだとか、
そう見えてくるんですが。

まあ、内省するだとか自分を否定してみるだとかって、
そのようにしてみて
最終的に自分を肯定できるようにするのが目的ですから、
この『おとなになるってどんなこと?』を読んで、
だめな部分がちらと見つかっても、
見つかったらそれで光の射すほうへ向けるのだ
と捉えるのがいいだろうと思いました。

誤解のないように言えば、
本書は読者を責めたり説教したりは一切していない本です。
著者の経験を例にして
いろいろな人生の問いに答えてくれる本でした。
中高生にはすごくいいかもですよ。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする