Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『余命10年』

2019-12-23 00:59:01 | 読書。
読書。
『余命10年』 小坂流加
を読んだ。

この小説はたぶんライトノベルで、
ライトノベルって初挑戦だったのですが、
思ったよりもずっとしっかりしているものなんですね(偏見持ち、かつ不遜)。
途中まで、いい意味でふつーの日常感覚という感じがしました。
がしかし、最後、クライマックスには大の男が滝涙しました。
しょっぱい涙がたくさんでてしまいました。

主人公の茉莉は遺伝性の不治の難病によって、
20歳のときに「余命10年」を宣告される。
それからの10年をたどる物語です。

限られた短い人生を、その女性はどう生きるのか。
何を選択し、何を諦めるのか。
等身大の心理でしっかり考えられていると思いました。
それが正解ではないかもしれない。
けれども、それがひとりの女性が選んだ「人生の送り方」であったことに、
ああだこうだと他者が干渉するものではないと思えてくるし、
きっとそれは正解に近い。

悩み、葛藤、諦め、悔い、そして、よき想い出。
クライマックスでは、そういったものたちが読者にぐっと迫ってくるでしょう。

また、お茶の家元に体験教室に行った章が素晴らしくて、
一番のお気に入りなんですが、
著者のテクニカルな部分として、
そこの章の言葉遣い、描き方が、
僕についているぶんにはか弱い筋肉なのに、
著者にとってはちゃんとした筋肉であるものをつかっている感じ。
なんていうか、感性中心に、レトリックを展開するというのですかね。
そういう技術と力をなんとかして僕も養おうと思いました。



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