ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

フランスワインと原発

2008-09-09 22:05:24 | ワイン&酒関係雑記
一見関係なさそうな「フランスワイン」と「原発」ですが・・・

この7月に立て続けに事故を起こしたフランスのアビニョン近郊の「トリカスタン原発」この地域のワインを巡り、ひと騒動が起きています。


「トリカスタン」と聞くと、ワインに詳しい人は 「Coteaux du Tricastin」 を思い浮かべるはず。

ローヌ地方の南に位置するフランスのAOCワインのひとつで、白ワインと赤ワインがつくられている地域です。

ローヌワインの中でもメジャーなものではありませんが、それこそ、ソムリエ試験などで出題の対象となる、ちゃんとした生産地域です。


しかし、08年の7月7日以降、同じ「トリカスタン」の名を持つ原子力発電所で相次いで事故が起き(7日のウラン廃液流出、23日の放射能漏れなど)、その汚染の程度はそれほど高くないということですが、「トリカスタン」という名前のイメージは地に落ちた、といっていい状況になってしまいました。



こうしたことを受け、コート・デュ・トリカスタンのワインをつくる生産者から、原発と同じ名前の「トリカスタン」を使いたくないんですけど!という切なる願いが出されたのです・・・



我々日本人をはじめ、「トリカスタン」がすぐに原発と結びつかない外国人にとっては切迫した状況でないように思いますが、原発国家フランスでは、ある特定の地名が原発の発電所の名前だとすぐわかってしまうわけで・・・

と考えると、たしかに、「トリカスタン」という原発を想像させる名前をワインに付けたくはないだろうなぁ・・・とは思います。


過去を振り返ってみても、1986年に起きた旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発事故で、放射能モレ事故が農業や酪農、林業、漁業etc...と、さまざまなところに影響を及ぼしたことを考えると、今回のコトー・デュ・トリカスタンのワイン生産地域の人たちの悩むわけがわかります。

今回の事故はごく軽いものだったのが幸いでしたが、チェルノブイリでは、事故地から遠く離れた日本にさえも放射能を含んだ雨が記録されましたし、程度の大きさはあれ、原発事故は非常にデリケートな問題です。

「コトー・デュ・トリカスタン」という名称は、今後たぶん変わっていくと思いますが、原発との関係で名称変更が認められるであろう事例は、これが初めてになるかもしれません。

この先、注目したいアペラシオンです。

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肝心な話、今回の事故のワインへの影響ですが、
もちろん大丈夫ですので、ご安心下さい



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