白堊スポーツ - since 2004.09.18

母校・盛岡一高や岩手のスポーツ情報、読書感想、盛岡風景などをお伝えします。

死海のほとりー遠藤周作

2021年01月29日 | 読書

評価5

小説家の「私」が旧友の元聖書学者が住むエルサレムを訪ねて、ガリラヤ湖畔、死海とイエスの足跡をたどる。イエスの物語も同時に語られる複合構成。「キリストの誕生」「イエスの生涯」と読み進めてついに著者のイエス像発見!

「私」の学生時代の寮の舎監(修道士)ユダヤ系ポーランド人・コバルスキ(あだ名:ねずみ)の行方も同時に探し求めるが、ドイツの強制収容所で亡くなっていることが判明。この男の最後とイエスの最後に「私」は永遠の同伴者としてキリスト像を見出すのであった。

狐狸庵先生のキリスト像がわかりすっきりしました!
遠藤周作面白い!!!

今年は、アガサ・クリスティーイヤーかつ小川洋子イヤー、遠藤周作イヤーだ(笑)!

一本橋ー小さい頃の思い出話。

2021年01月29日 | 家族・自分
幼稚園は今の盛岡中央郵便局の場所にあった盛岡白百合学園高校隣の白百合幼稚園に行っていた。家はクリスチャンでもなく、たぶん一番近かったので通っていたんだろう。先生は修道女の姿をしていた。担任はマリア先生だった。

今では郵便局の裏手は小路になっているが、当時は赤川という川が盛岡城址へ向かって流れていたのだ。幼稚園へ行くには赤川に架かる「一本橋」(今の山田内科クリニックの手前)を渡らねばならない。「一本橋」1本ではなかったが、丸太2、3本で簡単に作った橋で、毎日恐怖の連続。

川に流された話は聞いたことがないので、河西の園児はみんな無事だったのだろう。

貸本屋ー小さい頃の思い出話。

2021年01月28日 | 家族・自分
私は盛岡の仁王新町(現在の中央通二丁目)で生まれ育った。
小学校低学年の頃、近所の貸本屋へ漫画本を借りに行っていた。月刊誌の付録も売ってくれていた。
当時、お店にあった本で記憶にあるのは・・・

・まぼろし探偵
・七色仮面
・鉄人28号
・のらくろ
・矢車剣之助
・赤胴鈴之助
・黄金バット
・鉄腕アトム
・エイトマン
・風のフジ丸
・少年ケニヤ

私は、大ファンだったエイトマンと風のフジ丸を借りて、な、なんと、学校へ出す冬・夏休みの絵の課題に、これらの漫画を描いて提出していたのだ。

白幡稲荷神社の前の広場には紙芝居が時々やって来た。
内容は黄金バットやアラジンの魔法のランプだったような気がする。

なぜか当時の記憶には姉や妹や近所の友達の姿がない。自分では孤独を感じたことはないが、どうやら小さい頃から我道を行く人間であったらしい。

オリエント急行殺人事件ーアガサ・クリスティー

2021年01月28日 | 読書

評価4

皆さん、ご存じの名作中の名作。オリエント急行の寝台車両で米国で凶悪事件を重ねて来た男が刺殺された。たまたま居合わせたポアロが解決に乗り出すが、どうも12人の乗客全員が嘘の証言をしているようだ。ポアロの「灰色の脳細胞」はどんな結論を見出すのか!?

題名だけは知っているものの、映画も見たことはなく、初めてひも解くオリエント急行殺人事件。読み終わっての感想。

「ありゃ~こりゃまたたまげだ。」

ちょっと無理やりっぽいストーリーだが、エンターテインメントとしてこれもアリってことですね(笑)。それなりに楽しめました!

シュガータイムー小川洋子

2021年01月26日 | 読書

評価5

かおるは病的な食欲を持つ大学4年生。3歳年下の背が伸びない病を持つ弟が下宿先の宗教団体に入信する。そんな彼女のひと夏を中心とした失恋の物語。青春にも「終わりがある」ことが少し物悲しい・・・

小川さんらしいフレーズ

「家庭の医学」
小川さんは小さい頃から家にあった家庭の医学を読んでいた。

「アンネ・フランクの献立表」
これは、かおるが弟の航平を夕食に招待した時の献立表を見て弟が言うセリフ。アンネはかくまってくれているオランダ人夫婦を結婚記念日のパーティーに招待した時に手作りの献立表を添えていたのだった。

静謐な言葉の一つ一つに引き込まれてしまいました。
嗚呼、満足!!!

秘密の花園ーバーネット

2021年01月25日 | 読書

評価4

インドで暮らす少女メアリはコレラで両親を失い英国ヨークシャーの叔父に引き取られる。その屋敷にはある理由で閉ざされた庭園があった。メアリとその世話係マーサの弟ディコン、病弱なメアリのいとこコリンの3人がこの庭園を素晴らしい花園に変えて元気を取り戻す感動の物語。

ジジイが読む世界の名作シリーズ。
勝手気ままで弱弱しいメアリがどんどん子ども本来の快活さを取り戻し、引きこもっていたコリンを引っ張り出し、ついにコリンは全快して父と再会。いや~感激のラストでした!イギリスのヨークシャー地方の情景が目に浮かぶようなお話でした。これはやはり映像で見てみたいですね。

海ー小川洋子

2021年01月23日 | 読書

評価4

短編7作品。表題作には死に真似をする実在の動物オポッサム、魚の鱗と飛び魚の胸びれで出来ている楽器「鳴鱗琴(めいりんきん)」が登場。そして作者にしては珍しい官能小説も!

①海②風薫るウィーンの旅六日間③バタフライ和文タイプ事務所④銀色のかぎ針⑤缶入りドロップ⑥ひよこトラック⑦ガイド

空想の楽器、年齢差のある人物の交流、身近にある死の気配、安定の小川ワールド。一番面白かったのは漢字にこだわった官能小説「バタフライ和文タイプ事務所」。とてもここではその漢字を書けません(笑)。そういえば「密やかな結晶」にもタイピストさんが出てきましたね。「風薫るウィーンの旅六日間」よく小川さんの作品に出て来るウィーンですが、オチがよめて大満足。「ひよこトラック」はカラーひよこのエッセイを思い出しました。

同じ作家さんの本をいろいろ読むと、縦糸横糸がわかって楽しいものです。

キリストの誕生ー遠藤周作

2021年01月23日 | 読書

評価5

イエスの死後、ペトロやヤコブを中心とした弟子グループによるイエスの神格化、ポーロ、バルナバによる異邦人布教と保守派との対立を追う。「神はなぜ沈黙しているのか」「キリストはなぜ再臨しないのか」の謎はとけるのか?

2つの謎が原始キリスト教団の信仰エネルギーになったと作者は述べている。結局は謎は謎のまま・・・なのである、と凡人の私は思い、どうも釈然としないものが残るが、イエスは神というよりも「人間の永遠の同伴者」と理解することで心の置き所としたいと思う。

キリスト教とローマ帝国は切っても切り離されない関係にあるのはもちろんだが、その中でも重要な事件について記しておきたい。

西暦66年、ユダヤで反乱が勃発。皇帝ネロは後の皇帝・ヴェスパシアヌスに全権を与え事態を収拾させるが、この時の騒乱が結果的にユダヤ教の組織の変貌と原始キリスト教団の消滅によるキリスト教の広範囲への布教へと結びつくことになるのだった。この反乱の原因がユダヤ教徒と非ユダヤ教徒のギリシア人とのささいな争いだったことには驚かされる。

「イエスの生涯」「キリストの誕生」を読んだことで、ユダヤ教、原始キリスト教、キリスト教の布教、イエスの神格化等々について知ることができたので、これからの知識吸収に生かしたいと思う。死ぬまで学習!

イエスの生涯ー遠藤周作

2021年01月21日 | 読書

評価5

11歳でカトリックの洗礼を受けた著者が西欧キリスト教をイエスの人間的生涯を追うことで和製に仕立て上げた作品。反ユダヤへ対抗する指導者としての役割を求めた民衆に対しイエスの真意は「神の愛の証明」「永遠の同伴者」であった。

「ローマ人の物語」を始め西洋物の本を読む時にキリスト教に対する理解は欠かせない、ということで手に取った本。

4つもある福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)、福音=よろこばしいことの知らせ、預言者=神の言葉を預かる者等々、基本的知識がないものの、動画でイエスの一生を見ていたので筋書きを追うことに苦労はしなかった。同作者の「沈黙」を数回読んだが、どうしても神の沈黙の意味が理解できなかったのだが、この書で少しは理解(永遠の同伴者)できたような気がする。

ではでは、続編の「キリストの誕生」も読み進むことにいたしましょう!

ブラフマンの埋葬ー小川洋子

2021年01月19日 | 読書

評価4

第32回泉鏡花賞作品。
芸術家に仕事場を提供している「創作者の家」の管理人である僕は突然現れた4本足の動物と暮らすことに・・・名前はブラフマン(サンスクリット語の謎という意味)とつけた。ブラフマンと暮らすひと夏の物語。

創作者の家という閉鎖空間、その近くにある石棺の丘という死後の地、僕が好きな雑貨屋の娘とその視線が見つめる貝殻形の髪留め、ふくらはぎ、踵、指先、これぞ小川洋子ワールド!

大好きな泉で泳いで遊んでいたブラフマンが雑貨屋の娘が運転する車に轢かれてあっけなく死んでしまう。ブラフマンの愛くるしいふるまいに微笑ましさを感じていただけに残念な結末でした。