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“お揃いのユニフォーム”で雨風に立ち向かう

2015-12-19 16:09:11 | 編集手帳

12月17日 編集手帳

 

 駆け出しの頃、
原稿にうっかり「お揃(そろ)いのユニホーム」と書いて、
上司に注意された。
「おい、不揃いのユニホームがあるのか」。
その通りだが、
あえて“お揃いの”と書きたいときもある。

家族とは、
身と心を寄せ合って浮世の雨風に立ち向かう一つのチームだと思ってきた。
姓はお揃いのユニホームだろう。
夫婦間もそうだが、
子供たちが兄弟姉妹で別 の姓をもつ家族というものを想像できないでいる。

…と書けば、
山ほど異論や反論が出ることは承知している。
世論を二分し、
司法の最上階まで行き着いた難題 である。

お揃いのユニホーム、
夫婦同姓を定めた民法の規定を最高裁大法廷が「合憲」と判断した。
それはいいとしても、
旧姓を通称に使用できる仕組みを広げるなど、
普段着をもっと着やすくする努力は引きつづき怠れまい。

「〈大田美和〉が好きなんです」とやわらかく言わねばならぬ夫婦別姓(大田美和歌集『水の 乳房』)。
結婚後も旧姓を名乗る理由を聞かれたのか。「やわらかく」の一語に、
無理解な問いにうんざりした様子がうかがえぬでもない。
社会という“仕立屋”の知恵が要る。

 

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冬の噺(はなし)

2015-12-19 07:30:00 | 編集手帳

12月12日 編集手帳

 

 落語に出てくる人物はツイている。
富くじに当たり、
財布を拾い、
ほんの偶然から大金を手に入れる。
『富久』や『芝浜』がそうである。

立川談春さんは著書 『赤めだか』(扶桑社刊)に書いている。
〈改心して、
 努力して、
 必死に懸命に生きた結果、
 つかんだささやかな幸せ、
 なんていう話は、ただの一つもない〉 と。
落語は修身の副読本には向かない。

昭和の名人から現役まで39人の名演を計100枚のCDに収めた『NHK落語名人選一〇〇』が売り出されたと、
文化 面の記事にあった。
林家三平『源平盛衰記』など、
初めてCD化された音源も17演目あるという。

古典落語は冬の噺(はなし)に名作が多い。
先ほど挙げた『富久』や『芝浜』は代表格だろう。
寄席の木戸をくぐるに越したことはないが、
かなわぬ人にはCDやDVDがある。
口演を活字に起こした本で楽しむ手もある。
落語で季節感を味わう年の瀬もいい。

現実には、
宝くじは当たらず、
財布も拾わない。
絵空事だとは分かっている。
〈いつはりも いたはりのうち水中花〉(鷹羽狩行)。
つらい真実よりも優しい嘘(うそ)が慰めになる。
冬にはそんな夜もある。

 

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