12月17日 編集手帳
駆け出しの頃、
原稿にうっかり「お揃(そろ)いのユニホーム」と書いて、
上司に注意された。
「おい、不揃いのユニホームがあるのか」。
その通りだが、
あえて“お揃いの”と書きたいときもある。
家族とは、
身と心を寄せ合って浮世の雨風に立ち向かう一つのチームだと思ってきた。
姓はお揃いのユニホームだろう。
夫婦間もそうだが、
子供たちが兄弟姉妹で別 の姓をもつ家族というものを想像できないでいる。
…と書けば、
山ほど異論や反論が出ることは承知している。
世論を二分し、
司法の最上階まで行き着いた難題 である。
お揃いのユニホーム、
夫婦同姓を定めた民法の規定を最高裁大法廷が「合憲」と判断した。
それはいいとしても、
旧姓を通称に使用できる仕組みを広げるなど、
普段着をもっと着やすくする努力は引きつづき怠れまい。
「〈大田美和〉が好きなんです」とやわらかく言わねばならぬ夫婦別姓(大田美和歌集『水の 乳房』)。
結婚後も旧姓を名乗る理由を聞かれたのか。「やわらかく」の一語に、
無理解な問いにうんざりした様子がうかがえぬでもない。
社会という“仕立屋”の知恵が要る。