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ウィーン 伝統の街輝かす日本人照明デザイナー

2017-08-10 06:19:46 | 報道/ニュース

7月15日 おはよう日本


オーストリア ウィーン。
世界遺産に登録されているシェーンブルン宮殿をはじめ
ハプスブルグ家の栄華のもとで花開いた豊かな文化・芸術がいまも多く残されている。
はなやかな暮らしを彩るのに欠かせないのがシャンデリアである。
中世に生まれ
豪華さを競う王侯貴族の富と権力の象徴だった。
ウィーンでは19世紀ごろから
材料に手ごろな真鍮やガラスが使われ始め
市民の間にも広がった。
もともとロウソクだった灯りを電球にしたのもウィーンが発祥で
市民の生活に深く根付いている。
(市民)
「シャンデリアはウィーンの歴史の証のようなものです。」
創業200年の宝石店。
ヨーロッパ各地の王室も利用する老舗である。
この店の顔となるシャンデリアを日本人のデザイナーが手掛けた。
(宝石店 店主)
「ウィーンの誰もが彼女を知っています。
 街中に作品がありますから。」
伊藤恵さん。
ウィーンで最も注目されている照明デザイナーである。
(伊東恵さん)
「モダンにしたいと思って
 ロウソクみたいなものを全部取ってLEDをぐるっと使った。」
伊藤さんはシャンデリアにこれまでに一般的でなかったLEDを使った。
LEDの白く強い光が宝石を最も美しく輝かせると考えた。
一方で
宝石を身につける人の肌があでやかに見えるようにと
周りには黄色い灯りを設置。
色合いの調和を図った。
(伊東恵さん)
「白い光と黄色い光
 柔らかい色をミックスしている。
 顔もきれいに見えるし
 宝石もきれいに見える。
 両方生かせる。」
大切なのはシャンデリアそのものの美しさではなく
放たれる光が生み出す空間の美しさ。
シャンデリアはあくまで脇役だという伊藤さんの考え方が
多くの人に受け入れられている。
(宝石店 店主)
「人々は皆『何か変わったね』と言いますが
 何が変わったかは気づかないんです。
 主張しすぎない
 それこそが彼女の素晴らしさなのです。」
伊藤さんのシャンデリアは従来の発想にこだわらない。
レストランのバーカウンターの真上に設置した
幅6メートルのシャンデリア。
天井近くにある丸いシャンデリアという伝統的な形ではない。
以前のランプでは光の当たり具合がバラバラだったというが
横長にクリスタルに並べたことで
バーのどこに座っても客の顔が柔らかく照らされるよう工夫した。
(客)
「照らされている感じはなく
 あたたかみがあって心地いいです。」
(伊東恵さん)
「あまり光が当たらず
 それでもきれいに見せる。
 影ができないような高さにして。」
バーに座ると女性がきれいに見えるという
一番人気の席になった。
(レストランオーナー)
「彼女は私が求めていたことを実現してくれました。
 満足という言葉では足りないぐらいうれしいです。」
デザイナーを志しウィーンに渡って20年余。
光で空間を美しく見せる作品は評判を呼び
新作を発表するたびに地元メディアに取り上げられるほど有名になった。
そしていま
人生最大の仕事に取り組んでいる。
依頼主はウィーンで最高峰の5つ星ホテル ザッハー。
ケーキのザッハ・トルテを生んだことで知られ
そのカフェはウィーンを訪れる観光客にとって欠かすことのできない場所とも言われている。
今年カフェの全面改装に合わせて
店内全ての照明が伊藤さんに任された。
(伊東恵さん)
「2階から下まで吊り下げられる5メートル10センチのシャンデリアです。」
手掛けるのは高さ5メートルの大作。
伝統的なデザインを随所に取り入れながら
新しい時代の到来を感じさせるデザインを目指している。
(ホテル ザッハー経営者)
「ザッハーはウィーンそのものなのです。」
「ザッハーの伝統とは何なのか
 2017年のザッハーはどうあるべきなのか。
 彼女が切り開いてくれるでしょう。」
(伊東恵さん)
「いい素材をもらってどういう風にいかして
 次の世代まで残せるか。
 10年で飽きるものではなく
 一生残るものを作りたい。」
中世の文化が今も息づくウィーンの街。
伊藤さんの灯りがまたひとつ
街の魅力を灯す。




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