8月15日 編集手帳
詩が刻まれていた。
題名を『あのとき空は青かった』という。
〈戦争という夜のあと
こどもの朝が訪れた〉。
以前、
淡路島の公園で見た「瀬戸内少年野球団の碑」である。
戦争に心身の傷ついた大人がいて、
白球に夢を追う子供がいた。
作詞家、
阿久悠さん(1937~2007)の自伝的小説『瀬戸内少年野球団』をご記憶の方は多かろう。
詩碑の「あのとき」は72年前のきょうを指す。
野球・映画・流行歌の三つを、
阿久さんは「民主主義の三色旗」と呼んだ。
戦後日本の平和を象徴する野球をこよなく愛した人である。
職場のテレビから不意にどよめきが聞こえた。
甲子園でサヨナラ劇があったらしい。
泥だらけの笑みが弾(はじ)けている。
応援の女生徒が泣いている。
詩碑の言う「夜」ではない。
子供たちの「朝」が続いている当たり前の事実に感謝した。
いつも以上に身の引き締まる終戦の日である。
阿久さんの『契り』(作曲・歌、五木ひろし)を思い出す。
〈緑は今もみずみずしいか
人の心は鴎(かもめ)のように真白(まっしろ)だろうか
子供はほがらかか
愛する人よ すこやかに…〉。
亡き人の、
気遣わしげな声を聴く。