7月29日 経済フロントライン
大阪中央卸売市場。
朝8時に一番乗りで仕事場にやってきた武藤北斗さん。
武藤さんは天然のエビをムキエビやエビフライに加工・販売する会社の工場長である。
この日は9時に3人のパート従業員が出勤してきた。
しかしあと何人来るのか武藤さんにはまったく分からないという。
(パパニューギニア海産 武藤北斗さん)
「今日なんか少ないと思ったら
昨日今日と学校の終業式みたいで
それで休んでいる人が多いみたい。
たぶん今日は増えなんじゃないかな。
と言いながら分からない。
僕らの予想は当たらない。」
じつはこれは「フリースケジュール」と呼んでいる働き方。
パートの従業員は15人いるが
いつ働くか
何時間働くかは
すべて従業員が決めている。
どんな仕事をするかは出勤した人数に合わせて武藤さんが支持する。
人数が少ないこの日は手間のかからないムキエビの加工をすることにした。
冷凍して出荷するために手間のかかるものは人数が多いときに作って保存し
取引先の注文に柔軟に対応している。
武藤さんは以前は宮城県石巻市で同じ仕事をしていたが
東日本大震災で被災。
大阪に拠点を移した。
しかし採用した従業員が短期間で辞めることが多く
悩んでいたときに思い付いたのが「フリースケジュール」だった。
従業員を定着させるため
“働き方は会社ではなく本人が決める”と発想を転換したのである。
「工場としては成り立たないよと多くの人に言われました。
僕の中では会社の都合よりも大切なのはみんなが自主性を出す働き方。
働きやすい会社になることが一番重要だと。」
変えたのは働く時間だけではない。
「うちでは“好き嫌い表”と言っている。
好きなものを優先してやっていって
嫌いなことはやらないルール作りをしている。」
パン粉つけや掃除など約30種類ある作業について好きか嫌いか聞き取り
好きな仕事で力を発揮してもらおうというのである。
全員が嫌いという仕事は公平に分担する。
(従業員)
「嫌いな作業をやらなくていい分
他の仕事を一生懸命やりたいと思う。」
その結果辞める人が減り
従業員のスキル
さらにチームワークも向上。
生産性が上がり
売り上げが5%増えた月もあった。
(パプアニューギニア海産 武藤北斗さん)
「自分たちが心地良く働くためにはどうしたらいいか
考えるのを続ける。
大切というかやっていくべきかなと思う。」