7月27日 キャッチ!
ブラジル北東部セアラ州のドクター・ジョゼ・フロッタ公立病院で
画期的なやけど治療が行われている。
まだ臨床試験の段階だが
治療効果の高さにブラジルの研究者らから熱い注目を集めている。
その治療とは魚の皮を使った治療法なのである。
「痛みもなく安価です。」
やけど治療に使われていたのは「ティラピア」と呼ばれる淡水魚の皮である。
ティラピアの切り身は臭みがないうえに肉質も良く
近年ブラジルでも食用として急速に需要が高まっている。
また成長も早いとされ
ブラジル北東部では養殖が盛んに行われている。
良質なたんぱく質として消費されてきたティラピアだが
今度は医療用として捨てられてきた皮が有効利用されようとしている。
ていねいに剥がされた皮は
汚れを洗い流して氷の入った容器に入れられ研究室に運ばれていく。
ティラピアの皮をやけど治療に使おうというこの研究プロジェクト。
きっかけは外科医のマルセロ・ボルジェスさんが6年前に読んだある記事だった。
(外科医 マルセロ・ボルジェスさん)
「2011年のある記事で
魚の皮は繊細で丈夫だと知り
やけど治療に使うことを思いついたのです。」
そしてボルジェスさんの研究を後押しするのが同じく外科医のエジマ―ル・マシエルさん。
いままで数多くのやけど治療を行ってきたマシエルさんは
このプロジェクトの有用性に共感し
資金集めに奔走した。
(外科医 エジマ―ル・マシエルさん)
「患者の多くは貧困層で保険も未加入。
貧しい人のために役立つことを願います。」
2人の医師が進めるプロジェクトの特徴は
もともと捨てられていた魚の皮を使うために材料費が安いこと。
そしてティラピアの皮には
人が自然治癒力を発揮すするために助けとなる成分が豊富なことに着目したのである。
その成分とはティラピアの皮に含まれる上質のコラーゲンである。
コラーゲンが持つ保湿力がやけどの治療に効果的だとされている。
魚の皮のコラーゲンがどのようにやけど治療に役立つのか。
やけどを負って損傷した患部
そこに魚の皮でふたをすると皮膚の奥から組織を修復させる成分が染み出てくる。
潤いがあるために成分が活動しやすい環境となる。
こうした成分が患部の修復や細菌の除去などを行い皮膚の再生を促す。
この治療法は「湿潤(うるおい)療法」と呼ばれ
ダメージの比較的浅い患部の治療に有効だとされている。
これまでのやけど治療では患部を消毒しガーゼで保護してきた。
これに代わる治療法としてこの「湿潤(うるおい)療法」が注目されている。
患部に直接あてる皮は医療用の殺菌薬などに繰り返し浸して処理する。
マシエル医師によると
これまで100人以上がこの臨床試験に協力。
患者全員に一定の効果があったとしている。
臨床試験に協力したジョスエ・ベセハジュニアさん(35)もその効果を実感する1人である。
(ジョスエ・ベセハジュニアさん)
「包帯を撮るときも魚の皮が貼ってあるので皮膚にくっつきません。
いつの間にか新しい皮膚が再生しました。
神様とティラピアのおかげです。」
プロジェクトはまだ試験中だが
患者からは
痛みが減ったり回復までの期間が短縮されたりと好意的な意見が寄せられている。
そしてなにより材料費が抑えられる可能性があり
現地では実用化への期待が高まっている。
(外科医 マルセロ・ボルジェスさん)
「これまで100人以上の患者で成功して
誇りと感動にあふれています。
これを世界中に広めていけたらと思います。」