7月27日 おはよう日本
なかなか解決策が見いだせない格差や貧困の問題。
生活保護を受けている人が全国で最も多い大阪市では
年間約3,000億円を生活保護費に使っている。
生活保護の人に様々な就労支援をしているが
仕事を得て自立した人の割合はわずか4%。
政策の評価がなかなか上がっていないという。
(大阪市保護課 難波勉課長)
「なかなか就労に結びつかないのが現状。」
格差や貧困は世界共通の課題である。
どうすれば解決の糸口を見つけることができるのか。
そこで注目されているのがベーシックインカム Basic Income(基本所得)。
全ての人に
無条件で
毎月一定額を支給するという
社会保障政策である。
ポイントは“無条件”。
生活保護費や失業保険を受給するためには仕事や所得の有無を問われるが
ベーシックインカムは何の制限もなく
ただ自動的にお金が振り込まれる。
正式に導入している国はまだ無い。
充実した福祉政策で知られるフィンランド。
フィンランドの失業率は8,8%。
地元の協会が行っている無料の食料配布には失業者を中心に1,000人以上が集まっていた。
(失業者)
「経済状況は最悪です。
ここでなんとか食いつないでいます。」
こうしたなか今年1月からフィンランド政府は
全国の失業者から無作為に2,000人選び出し
毎月約7万円を支給するベーシックインカムを始めた。
実験が始まって7か月。
この制度によって生活を立て直すことができたという女性。
11歳の息子を育てるシングルマザーのマリ・サーレンバーさん(30)。
去年10月に勤めていたスーパーマーケットを解雇された。
頼りになるのは月8万円の失業手当だけだった。
(マリ・サーレンバーさん)
{毎日不安でした。
子どもの教育費や電気代などの生活費を払うことで精一杯でした。」
解雇されて2か月後
サーレンバーさんのもとに政府から手紙が届いた。
ベーシックインカムの対象者に選ばれたという知らせだった。
現在サーレンバーさんは印刷所とスーパーの2つの仕事をかけもちして働いている。
ベーシックインカムによって仕事を再開し
生活は大きく変わったのである。
失業したあとサーレンバーさんは国から月8万円の失業手当をもらって生活していた。
ただし収入が4万円を超えると減額される。
仮に今と同じように仕事をすると手当はほとんどなくなる。
一方ベーシックインカムの支給額は7万円。
働いても減額されることはない。
そのため7万円を安定した生活誌として使い
次々と仕事をすることにした。
その結果収入は合計で22万円になった。
ベーシックインカムによってサーレンバーさんは働くことに前向きになり
経済的な余裕が生まれたのである。
(マリ・サーレンバーさん)
「とても前向きな気持ちで仕事ができます。
ずっと抱えていた経済的な不安もなくなって安心しています。
将来はフルタイムで働いて自分の給料で生活を支えられることを望んでいます。」
なぜフィンランドはベーシックインカムの社会実験を行うことにしたのか。
(社会保険庁 ベーシックインカム責任者 オッリ・カンガスさん)
「われわれが歴史の中で形作ってきた社会保障制度が未来に絮って通用するのか。
疑問が投げかけられているのです。
この制度で人々が働くことに目覚め
生活を大きく改善させる可能性があるのです。」
ベーシックインカムをきっかけに新たな挑戦を始めた人もいる。
ユハ・ヤルヴィネンさん(38)。
6月に自ら手掛けた工芸品を生産する会社を設立した。
木彫りの楽器をフィンランドだけでなくノルウェーまで売りに行く。
(ヤルヴィネンさん)
「1点4万円から13万円で売っています。
先日はアメリカのコレクターからも注文が入りましたよ。」
ヤルヴィネンさんは戸建て住宅の窓枠を作る会社を経営していたが
2年前倒産。
ふたたび事業を立ち上げる機会をうかがっていたが
起業すると失業手当が打ち切られてしまうため踏み切れなかった。
今年1月失業手当に代わってベーシックインカムが支給されたヤルヴィネンさん。
生活費を確保できるようになり
思い切って起業したのである。
(ヤルヴィネンさん)
「ベーシックインカムによって私は人間性を取り戻すことができました。
今の私は目先の生活に差輸されず
将来の可能性を信じることができます。」
今回行われているベーシックインカムの社会実験。
その意義について専門家は
(ベーシックインカムを提唱する歴史家 ルトガー・ブレグマン氏)
「これまでの社会実験では現金をもらえるからと言って
働かなくなる人など1人もいませんでした。
ベーシックインカムは新たな挑戦・企業・引っ越しのチャンスを全ての人に与えるものなのです。」