7月22日 経済フロントライン
去年フランスのパリで開かれたモーターショー。
1台4000万円という次世代電気自動車のコンセプトカーが大きな注目を集めた。
「電気自動車?
驚きだね。
いつか乗ってみたいよ。」
「とてもキレイ。」
「夢があるわね。
すぐにでも買いたいわ。」
この車を開発しているのは京都に本社があるベンチャー企業GLM。
社長の小間裕康さん。
世界的に電気自動車への期待が高まれば
自動車開発の経験がない会社にもチャンスがあると考え
7年前に起業した。
(電気自動車ベンチャー GLM 小間裕康社長)
「今まで車というのは自動車産業のプレイヤーだけが作れるものだった。
モーターやバッテリーという電気産業
自動車産業以外のプレイヤーがそこに参加することで作るものになっていった。
非常に可能性のある分野にチャレンジしていると感じている。」
この会社の従業員はわずか23人。
自社工場は持たず
車全体の設計やデザインに注力している。
初めにスポーツカーを発売したのは創業からわずか4年後。
ガソリンエンジンの車では考えられない早さである。
それを可能にしたのはガソリンエンジン車と電気自動車の仕組みの違いである。
ガソリンエンジン車は
エンジンとその周辺部は多くの金属部品を組み合わせた複雑な構造をしている。
自動車の性能を大きく左右するエンジンは
ほとんどの場合自動車メーカーが自社で製造している。
使用する部品は“系列”と呼ばれる下請け企業の技術力によって支えられていて
新規参入は容易ではない。
一方の電気自動車。
エンジンは無く
電池でモーターを回転させて走る比較的シンプルな構造である。
モーターや電池の技術は自動車以外の産業でも使われるため
自社開発ではなく
外部の企業から調達することも可能である。
この会社は
主要部品であっても外部から調達できる電気自動車の利点を生かし
わずか4年で開発に成功したのである。
(電気自動車ベンチャー GLM 小間裕康社長)
「自動車メーカーを中心として“系列”と言われる縦割りの産業構造に対して
今は水平分業
横のつながりでの産業構造にシフトしている。」
エンジンからモーターへの転換。
自動車会社の系列に属していない企業にもチャンスが広がっている。
GLMと電気自動車用のモーターを共同開発している安川電機。
主力製品は産業用ロボット。
世界トップクラスのシェアを誇り
売上高は約4000億円にのぼる。
ロボットの関節部分に使われる高性能モーター。
この技術は電気自動車への応用が可能である。
GLMが2019年の量産開始を目指す超高級スポーツカー。
安川電機はそのモーターを担い
自動車産業に本格的に参入したいと考えている。
(安川暖気 善家充彦技術部長)
「ガソリン車からEVに変わっていくことによって
業界の地図が変わってくるのではないか。」
製造も開発も違った世界・業界になっていく。
こういう世界に対して我々は今まで培ったものをぶつけて
新しいビジネスチャンスを展開したい。」
短期間で電気自動車の開発を成功させたGLM。
海外の巨大メーカーも注目している。
京都にある開発拠点に世界最大の自動車部品メーカー
ボッシュグループの技術者たちがやってきた。
ドイツに本社を置くボッシュグループは去年の売り上げが8兆7000円。
従業員39万人の巨大部品メーカーで
電気自動車へのシフトを急速に進めている。
ボッシュが担うのは電気自動車のバッテリーやモーターを制御する基幹システムの開発である。
いち早く日本のベンチャー企業と連携することで
日本やアジア市場進出の足がかりを築きたいとしている。
(ボッシュエンジニアリング 技術者 カイ・カップさん)
「全く新しい電気自動車を一から開発できるすばらしい機会です。
ボッシュはソフトウェアや電気自動車などの分野に焦点を当てて大きく変化しています。
そこには大きな需要があり
私たちはそれに応える準備があります。」
(電気自動車ベンチャー GLM 小間裕康社長)
「間違いなく10年後20年後
ガソリン車がほとんど無い世界がある。
こういうシフトが今まさに起こっている。」