国立競技場建て替え計画:取り壊し率100% 2016年11月3日
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる「国立霞ヶ丘競技場」の建て替え計画です。そもそも、本来は2016年に予定されていた東京オリンピックの計画では、オリンピックのメインスタジアムを中央区の晴海ふ頭内に建設する予定となっていました。メインの競技場を晴海埠頭に建設される予定だった新スタジアムに移すと共に、現・国立競技場はサッカー競技場として開催することが計画されたのですが、2016年オリンピックの開催誘致失敗によりこれらはすべて白紙撤回となりました。
その後、2020年の夏季オリンピックの東京承知活動の中でメインスタジアムを晴海ふ頭に新しく建設する計画から、既存の国立霞ヶ丘競技場を改修・大型化してメインスタジアムにする計画が持ち上がります。そもそも1964年(昭和39年)の東京オリンピックの時にメインスタジアムとして活用された国立競技場は、竣工してからすでに半世紀近く経過しており、老朽化対策の必要性に迫られていました。
2012年の2月(この時点ではまだ東京開催が決定されていない)、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致委員会が大会の開催基本計画を発表し、国立霞ヶ丘競技場を8万人収容のスタジアムに改築し、開閉会式、陸上競技、サッカー決勝戦、ラグビーの会場とすることを正式に発表しました。その後数か月間の議論があり、2012年7月末に新競技場の概要計画が発表されました。
1.現在の約5万4000人収容から8万人収容に増設
2.開閉式の屋根を備えた全天候型のドーム型スタジアム
3.9レーンのトラックを敷設して国際基準を満たす
4.競技場周辺の都立明治公園や日本青年館まで敷地を広げてサブトラックを敷設
5.観客席の一部を可動式にしてサッカーやラグビー大会の際は球技専用スタジアムとして使用
6.飲食・物販施設、音響、照明設備の強化
7.コンサートや展覧会、ファッションショーなどの会場としても使用
8.大規模災害時の広域避難場所としての役割
その後、新スタジアムのデザインコンペが実施され、安藤忠雄氏を審査員長として世界各地の建築家からデザイン作品を応募しました。応募総数は46件であり、その中から書類選考により11件に絞り、2012年11月に最終審査を行い、イギリス在住の女性建築家であるザハ・ハディド氏の作品をグランプリ(最優秀)として採用しました。
2014年の夏季に現施設の撤去・取り壊し工事を開始し、2015年秋季頃に建て替え着工、2019年竣工を目指します。そのはずでしたが、当初の計画を中止して、もう一度建物の設計をやり直すことになりました。
安倍総理大臣の「聖断」で、政治決着となるか
話がおかしくなり始めたのは、東京オリンピック招致に成功した2013年9月以降のことです。2013年11月、総床面積29万平方メートルから22万5000平方メートルへの縮小が発表されました。コンペで通過した当初案の試算で総工費が3000億円まで膨れ上がることが判明し、コンパクトなデザインに変更されることになったからです。この時点で約1625億円前後に収まると見られていたのですが、その後どんどん予算額が膨らんでいくことになり、2015年7月の時点で遂に2625億円にまで達してしまいました。
2015年7月17日、世論から見直しを求める声が日増しに大きくなっていく中、安倍総理大臣は建設計画を抜本的に見直す方針を固めたと発表しました。国際公募のやり直しも含め検討するとのことです。2015年秋までに整備費の上限などを盛り込んだ新整備計画をまとめ、再度、国際コンペをして施工業者を選定し、2020年春までに完成をめざします。
再コンペが実施されて計2案が応募→A案に決定
再コンペを行って建物デザインを選び直す「新整備計画」の策定を2015年8月内に、「公募型プロポーザル方式」でのデザイン公募開始を9月初めに目指すと発表されます。新計画は8月28日に発表され、公募を9月1日に開始し事業者を12月末に選定という目標が決まります。やり直し前のザハ・ハディドさんの案は一方的な破棄という扱いになってしまい、当然のことながらザハさんサイドは怒り心頭なのですが、2016年3月末にザハさんはお亡くなりになってしまいました。日本国民からの仕打ちだったとすれば、国民の一人として申し訳なく思います。
12月14日、新デザインに応募した計2グループの「技術提案書」が公表され、どちらが採用されるのか注目されます。テレビ報道でも「A案」と「B案」のどちらが国立競技場にふさわしいか、国民全体で議論が始まります。
A者(A案)-大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所 共同企業体
B者(B案)-伊東・日本・竹中・清水・大林 共同企業体
12月22日に関係閣僚会議に諮り、大成建設・梓設計・隈研吾のチームによるA案に「優先交渉権者」が決定されます。翌2016年1月29日、約24億9127万円で競技場整備の第Ⅰ期事業を契約しました。同年11月までに設計を完了させる予定です。そして、2016年12月1日に工事着工となります。
A案の完成予想図です。
建築物の名称:新国立競技場(仮称)
地名地番:東京都新宿区霞ヶ丘町10-1ほか
住居表示:東京都新宿区霞ヶ丘町10
用途:運動施設(観覧場)、駐車場(自動車車庫)、その他
構造:鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造
基礎:直接基礎
階数:地上5階 地下2階
延床面積:194000㎡
建築面積:72400㎡
敷地面積:113039㎡
建築主:独立行政法人日本スポーツ振興センター
設計者:新国立競技場整備事業大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所共同企業体)代表者:大成建設株式会社一級建築士事務所)
施工者:大成建設株式会社
着工予定:2016年12月1日
完成予定:2019年11月30日
備考 観覧場、自動車車庫、その他
プレスリリース:ジャパンスポートカウンシルの専用ページ
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南東側から(外苑総合グラウンド前から)撮影した「新国立競技場(仮称)」の整備工事現場の全景です。2016年11月3日の散策だったのですが、この日から一カ月後の12月1日に晴れて工事着工となります。
整備工事現場の敷地南側を通っている道路を道なりに歩いて、「千寿院交差点」方向へ向かいます。この日は周辺道路がすべて閉鎖されていて、車道を歩き放題でした。
工事用フェンスに設置してある建築計画のお知らせを発見しました。12月1日に工事着工して、2019年11月末に完成予定なのですね。
新しい国立競技場(仮称)の工事は大成建設が行います。
敷地南側の道路を歩いて行くと、前方に「日本青年館」の建物が建っていた跡地が見えて来ました。この場所も国立競技場の敷地内に組み込まれていて、日本青年館は南側100メートルのテニスコート跡地で新ビルを建設中です。
「日本青年館前交差点」にやってきました。これから交差点前から西側へ向かって伸びている下り坂を歩いていきます。
交差点前から国立競技場(仮称)の建設工事現場を見渡して撮影しました。
日本青年館交差点から千寿院交差点へ向かって伸びている下り坂の途中から、整備工事現場を撮影しました。この坂には、名前が付いていません。
外苑西通りの「千寿院交差点」前にやってきました。交差点前から整備工事現場を見渡して撮影しました。
外苑西通りの「観音橋交差点」にやってきましたが、観音橋交差点から東側へ向かって伸びている道路は廃道となっていました。
千駄ヶ谷一丁目地区の「東京体育館」の敷地内にやってきました。ここから国立競技場(仮称)の整備工事現場内を見渡すことができます。
東京体育館内から(西側から)見渡して撮影してみると、国立競技場(仮称)の整備工事現場内は意外と起伏に富んだ地形が広がっています。工事着工前の時点で、工事用車両が多く展開していました。
整備工事現場の敷地北側には、工事用プレハブ小屋が展開していました。ここから見ると、断崖絶壁の上に建っているように見えますね。
整備工事現場内をズームで撮影しました。
整備工事現場の南側一帯を見渡して撮影しました。観音橋交差点から日本青年館跡地へ向かって伸びていた道路ですが、完全に消滅していました。
同じ明治神宮外苑内に建っている「明治神宮球場」「秩父宮ラクビー場」の周囲をズームで撮影しました。
奥には「日本青年館」の建て替え計画の鉄骨郡やタワークレーンが写っています。更に奥の鉄骨郡に関してはよくわかりません。同業者の皆さんのブログが取り上げているかもしれません。
国立霞ヶ丘競技場跡地の地図です。