午後2時30分。虫歯の治療。
天気予報の雨の降り始める時間と重なっている。
そう。「予報は、ずれる」・・・・かもしれない。
どうしようか。歩いていくか。それとも能天気に徹してカブで行くか。
散々迷ったけれど、結局カブで行く。うまくいけば別件の支払いもできるから。
だが、歯の治療だけで今日のメモリーは全て費やされた気分。刺激が強すぎた。
見た目はともかく、舌触りからすると歯が一本根っこだけ残して切り取られた気分。
歯茎を土堤だとしたら歯はその上にきれいに並んだ並木のようなもの。これが見事に揃っていたら「きれいな歯並び!」と褒められる。
が、残念ながら歯並びには全く褒められる要素のない乱杭歯の当方、ただでさえ行儀の悪い歯並びの中でも、特に一本、全く並ぶことすらできず60度くらいの角度で外に向けて飛び出ているのがある。下手するとイノシシの牙になりそうな。
それが途中の部分から虫歯になった。で、削り取ってもらったら斜面から斜めに突き出している切り株みたいになった、と。
元々飛び出して生えているのだから、舌先で並びを確認してもそこに来ると「歯がない!」としか認識できない。
そこで無理やり歯列の外側を舌でなぞってみると、「あれ!こんなところに切り株が!」といった感じになる。外側にあるのだから舌で確認するのは結構難しいが、鏡に映すと却って見易い。
麻酔の注射を打ち終わる辺りで「ちょっと痛いですけど最初だけ」と言われる。願わくば針先が刺さる前に言い終わって置いて下さることを!!
それだったら覚悟も少しはできるのだが。一人時間差攻撃。
削り始めてもこれが結構痛い。時々神経に触れるような鋭い痛み。顔をしかめたり、表情を緩めたりの連続はいつ終わるのだろうと思うくらい続く。
「あ~、これは相当に虫歯になってるな。石灰化している」との独り言が聞こえた。
そこからが酷い。細い棒状のものが虫歯を削った後に出現した穴(おそらくは神経が通っている筒状の穴)に突っ込まれていくのがよく分かる。
それ、想像するだけでも痛いのだけど、その奥底へ向けて突き込まれる時の痛みだけではなく、その棒を引き抜くときにわざわざ壁面をゴリゴリ引っ搔きながら抜き上げる。その度に神経を引っ掻かれているような痛みが襲ってくる。
何度それをやったのだろう。すっかり疲れ果て、辟易とした辺りでやっと終わった。
歯が一本なくなった感じだけれど、続きは3週後。
それまではちょっと見では分からない歯抜け爺さんの日々が続く。