さて。
去年も今年もそういうわけで葱自体は手に入れることができた。
事情も分かっていたから、とにかく雪が降らないうちにと思って行ったのは正解だった。
ただ去年も、・・・というより去年以上に今年は何だか違和感があった。
葱が細い。
九条ネギが原種と言いながら岩津葱は太い。下仁田葱ほどではないが、その代わりに下仁田葱よりはるかに大きい(丈がある)。加えて青い部分も全て食べられる。
「弾丸よりも速く機関車よりも強く」、ではないけれど、「下仁田葱より大きく九条ネギよりも太い」のが岩津葱。・・・だった。
並んでいるのを見ると、値段の高いのは確かに以前から見ているものなのだが、値段もそこそこのを見ると細めの砂丘葱(鳥取の白ネギ)と変わらない。
まあ、そうは言っても確かに岩津葱の商標があって、九条ネギ・下仁田葱・砂丘葱等とは明らかに違うのだが。
目的は達したのだから帰途に就く。
往路で気になっていた直売所の旗が視界の端を過った。
しばらく走ったがやっぱり気になる。引き返すことにする。
直売所の壁に葱の束がいくつか見える。中に入ると根の方は泥が付いたまま五、六本束にした葱があって、他に野菜も数種。
一束千円。
聞くと、以前は十店近くあったのだそうだ。それがみんなやめてしまっていたのだが、今、三店ほどが復活したらしい。
明らかに昔見た岩津葱だった。でも、もう二束買っている。
半分でもいいと言ってくれたので、500円分買って帰った。
岩津地区だけで作られていたのは、近くに生野銀山という大消費地があったからだった。
田舎で聞いたことがあるのだが、葱というのは地味の良い土地ではあまり美味しくならないらしい。じゃやせた土地ならいいかというと、そう簡単に決めつけることもできないみたいで、やっぱり相性というものがあるんだろう。
岩津葱の場合は持ってきた九条ネギがこの土地にぴったり合った、ということになる。
今は、岩津葱の栽培は朝来市全域で行われていて、それが消費地に出回っているらしい。つまり、岩津葱ではなくなりつつあるということか。
そして「やっぱり本来の岩津葱を食べたい」という声が岩津地区にも届き始めた?
帰って早速、鶏鍋。大盤振る舞い、葱二本。土鍋の蓋が閉じられる程度。
残り汁に今朝、うどんを一玉入れて朝食にする。
夜はレタス鍋にして当然のこと、葱も一本。