モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

トンボの背中は精密機械:茶臼山(妻女山里山通信)

2009-07-28 | アウトドア・ネイチャーフォト
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 キノコ狩りの途中で見つけたアオイトトンボ。前回はなかなか留まってくれずワンカット撮影できたのみでしたが、今回は赤松の混合林の林下に3匹発見。以前から気になっていたトンボの翅(はね)の付け根のアップを撮りました。トンボの翅は4枚が複雑な動きをしてホバリングや少しなら横移動、後退もできます。筋肉が4枚の翅の基部につながっていて、それぞれを別々に動かせるからです。これを直接飛翔筋型昆虫といいます。

 蜂のように、筋肉が翅ではなく外骨格につながっていて、筋肉を交互に収縮させて、外骨格全体を変形させて飛ぶのを間接飛翔筋型昆虫といいます。外骨格の反動を使うので1秒間に1000回以上の羽ばたきができるのです。この間、樹液を吸うカナブンを撮影していたら、オオスズメバチが突然やって来て40センチ上空でホバリングしたのには参りました。慌ててしゃがんで、そのまま素早く6m後ずさり。難を逃れました。

 トンボの翅は、細いパイプ状の翅脈(しみゃく)と、透明な薄い膜でできていますが、全体重の2パーセントほどしかありません。細いパイプ状の翅脈も軽量化の要因です。背中のアップを見ると翅脈と筋肉をつなぐ球状の腱のようなものが前翅、後翅に見えます。まるで精密機械のようですが、こんなむき出しでゴミでもつまったら大変だと思うのは考えすぎでしょうか。
 
 トンボのメガネは水色メガネという歌がありますが、水色だけでなく赤、オレンジ、黄色、緑となんでもあります。いわばサングラスですね。トンボは複眼で、飛びながら小さな虫を捕獲して食べるため、動体視力が発達しています。映像はいつも魚眼レンズで見ているような感じですが、人間の可視光線だけを見ているわけではないので、実際の映像は我々は知ることができません。

 動体視力が発達しているのに捕虫網にかかってしまったりするのは、視力よりも運動能力に問題があるのかもしれません。トンボの飛行スピードはそんなに速くないですから。でも複眼て便利かなとも思います。360度近く見えるわけで、単眼の人間のようにピント合わせも露出補正も必要ありません。高速で飛びながらどこに何がいるか、全て分かるわけですから便利です。人間が複眼だったら、人間関係や文化芸術から街や機械の構造もずいぶんと変わったものになったでしょうね。見つめる、見つめられる、ということができません。私だけを見て!というのができないんですね。いつも全部見えているわけです。楽でいいですね。

 歩いているトンボというのを見た人はいないと思います。ほんの僅かの移動にもトンボは飛びます。近所ののコンビニにおにぎり買いに行くのにも車で行く誰かさんのように。トンボの脚は留まることと虫を捕まえることにしか使いません。トンボの交尾はハート形とかいいますが、オスがメスの首根っこを捕まえているんですね。メスは下からオスの胴を抱えます。本人達は、ハート形がどうのこうのとは無関係に必死で子孫を残そうとしているわけです。

 その昔トンボは不退転の勝ち虫と呼ばれ、武士の兜の前立によく使われました。他にも昆虫を使った兜は多く、蝶、百足(ムカデ)、スズメバチなどもあります。愛だけではないんですよ。以前松代の真田宝物館でトンボの前立のついた兜を見たことがあります。戦国時代の日本の人口は、800万人前後。今以上に自然も多く、昆虫もたくさんいたでしょうし、戦場では昆虫食も普通だったでしょう。どれが食べられる美味しい虫か、知っていたはずです。トンボは食べなかったでしょうが、蜂の子は強力な栄養源だったはずです。

 ★ネイチャーフォトは、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、特殊な技法で作るパノラマ写真など。キノコ、夏の花、昆虫、樹木、蝶などを更新しました。トレッキング・フォトルポにない写真も掲載してあります。
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