モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

Rhapsody In Blue of Myxomycetes:粘菌ラプソディー(妻女山里山通信)

2009-07-26 | アウトドア・ネイチャーフォト
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 粘菌のラプソディ・イン・ブルー(青い狂詩曲)。
 この時期に雨後湿度100パーセントの森に入るということは、ヤブ蚊に餌をやりに行くようなものなんですが、粘菌(変形菌)は、こんな日に大発生するのです。流れる汗を拭きながら、しつこくまとわりつくヒゲブトコバエ科のヒゲブトコバエ(別名は、クロメマトイ)をタオルで振り払いながら歩きます。この小さな虫は、その別名の通り常に目の前にまとわりつく極めて鬱陶しい虫です。

  コバエ類にはショウジョウバエ科、チョウバエ科、ニセケバエ科、クロバネキノコバエ科、ノミバエ科、ハヤトビバエ科など、日本だけでも数十種類いるので、本当にやっかいです。なんでも人の体液を求めてくるのだとか。メガネやゴーグルは必須です。虫除けネットも持っているのですが、視界が悪くなるので止まって両手がふさがる作業の時のみに使用します。

 ヤブ蚊は二酸化炭素に寄って来るので、息をしなければいいのですが、そうもいきません。ミントハッカ系の虫除けを手作りしてつけると結構効果があります。この季節は他にもアブ、ブヨ、スズメバチなど注意しなければいけない虫はたくさんいます。しかし、そんなものにめげていては夏の里山トレッキングや撮影はできません。今回も虫にたかられながらの撮影となりました。

 倒木の上にキノコを発見。撮影しようと近づくとキノコの上に何かが生えています。高さは2ミリもありません。よく見るとキノコの上から倒木上までびっしりと生えています。これは粘菌の子実体だろうと撮影準備にかかりました。撮影に入ったら虫は関係ありません。三脚代わりに鉈鎌の柄を横にしてカメラを固定。撮影後確認すると白、または象牙色の軸に、青く円い胞子嚢が乗っています。

 モジホコリの子実体の一種かなと思い、帰って調べるとシロジクモジホコリ(Physarum globuliferum)で、キノコはウラベニガサの老菌だと分かりました。いずれもシイタケのほだ木に大量発生することがあるということなので間違いないでしょう。変形体は、黄色または白色。

 それにしても、このキノコと粘菌の関係はどういうものなのでしょう。共生なのか寄生なのか。たまたまシロジクモジホコリが胞子をなるべく遠くへ飛ばせる高いところへ成長していったら、それがウラベニガサの傘の上だったということでしょうか。おそらくそうでしょう。希にキノコを食べる変形菌というのがあり、ナメコを食べるブドウフウセンホコリや、それ以外にもイタモジホコリもキノコを食べるということですが、このシロジクモジホコリについては、この写真だけではなんとも判定できません。

 それにしても、老菌の茶色と粘菌の青がいい色合いで馴染んでいます。この粘菌の自由奔放な成長と子実体形成を見て連想したのが、ジョージ・ガーシュインの『ラプソディ・イン・ブルー』でした。演奏のリンクはフリージャズの名手、山下洋輔と東京フィルハーモニー交響楽団です。粘菌てフリージャズっぽいかなと。

 もうひとつラプソディ・イン・ブルーといえば、ウディ・アレンの『マンハッタン』。アカデミー作品賞に輝いた『アニー・ホール』、イングマル・ベルイマンと小津安二郎を彷彿させるシリアスな『インテリア』に続いて、ダイアン・キートンとのコンビの最高傑作といえる作品です。ニューヨークをここまで叙情的にお洒落に感傷的に描いた作品はないでしょう。オープニング最後のサビとNEW YORKのスカイラインに打ち上がる花火のコラボレーションは、感涙ものであります。

 妻女山からニューヨーク、粘菌からラプソディ・イン・ブルートとワープのついでに、ひとつアイデアを。粘菌の原形質流動をプログラミングした「粘菌くん迷路脱出ゲーム」を作ったら受けるでしょうか。トラップは、粘菌を食べるベニボタル科の昆虫やテントウ虫の幼虫に、突然の雨粒や急激な直射日光による乾燥など。どこかアイデアを買ってくれないかな。でも秒速1ミリでは、夜が明けてしまいますね。

★ここに登場した粘菌は、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】の粘菌3にアップします。

★また、フォトドキュメントの手法で綴るトレッキング・フォトレポート【MORI MORI KIDS(低山トレッキング・フォトレポート)】には、妻女山トレッキングのルポがあります。

★妻女山の真実について、詳しくは、本当の妻女山について研究した私の特集ページ「妻女山の位置と名称について」をご覧ください。
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