粘菌は、アメーバのように動き回り微生物(バクテリア)を捕食する特性と、菌類のように静止して胞子を飛ばす特性の両方を備えた単細胞生物です。原生粘菌、真正粘菌(変形菌)、細胞性粘菌に分けられていますが、私が撮影するのは前の二つです。カビなどの真菌やキノコなどの菌類とはまったく異なる生き物です。粘菌の同定を外見だけでするのは非常に困難です。種名については参考程度と考えてください。英語で粘菌はSlime molds、変形菌はMyxomycetes、Myxomycota。変形菌の種類は、世界で800〜900種。日本で400〜500種ほど。解説は専門的になりますが、なるべく分かりやすくを心がけました。怪しくも美しい粘菌の世界を楽しんでください。
写真は節を形成し成長途中のキフシススホコリ。体内には秒速1mmを越える原形質流動が起きており、肉眼では確認できないほどゆっくりと移動することができます。
驚くべきことに変形菌には迷路を抜けられる能力があるという。
●「粘菌に「知性」はあるか――。単細胞生物に「人間らしさ」の起源を探る、孤高の研究」北海道大学 中垣 俊之 教授:2008年にイグノーベル認知科学賞を受賞「物理エソロジー」とは。「単細胞だから単純などというのは、とんでもない誤解です。粘菌が持っている脳も神経も使わない情報処理システムは、原理的にすべての生物が持っている基本的な土台です。その意味で、あらゆる生物は知的である。これが単細胞生物の物理エソロジーに挑戦する、私の基本的な理解です」
●「脳を持たない粘菌が集団行動する秘密」生物物理学者 澤井 哲氏 「種の存続のために自己犠牲を払う利他的行動」:粘菌のことを非常に分かりやすく解説されています。
ツノホコリ(角埃)。原生粘菌類に属するツノホコリ科ツノホコリ属の粘菌。世界に三種、日本にあるのは一種。変種にはほかに、枝分かれしないエダナシツノホコリ、丸いタマツノホコリ、縮れたカンボクツノホコリとナミウチツノホコリがあります。高さは2ミリ前後。ごく普通に見られる粘菌です。他とは違い、透明な棍棒状の子実体の周りに柄のついた白い胞子嚢をつけます。周りに白く粉状に見えるものがそうです。胞子嚢がまだ未完成のものは透明に見えます(左の写真の下部。黄色と黒の虫は粘菌を食べるテントウムシの幼虫)。
エダナシツノホコリ(枝無角埃)ツノホコリ科ツノホコリ属。高さは2ミリ前後。半透明で、触るとゼリー状につぶれました。普通に見られる原生粘菌です。
タマツノホコリ(玉角埃)ツノホコリ科ツノホコリ属。ツノホコリの変種。別名は、タマサンゴホコリ。ツノホコリに似ていますが、子実体は蜂の巣状。小さな甲虫が写っています。粘菌は小さな虫の餌になることもあるらしく、ベニホタルの仲間も粘菌ではよく見かけます。右の写真は外生胞子を飛ばし始めている状態のようです。
ススホコリ(煤埃)モジホコリ科ススホコリ属。子実体は黄色い色素を含んだ石灰質で覆われています。 石灰質顆粒からなる外皮はもろく剥がれやすい。朽木に発生するわりとよく見られる粘菌です。左の写真の白い部分は、変形体が動いてきた痕です。
キフシススホコリ(黃節煤埃)モジホコリ科ススホコリ属。原形質流動は、一進一退を繰り返し、波打つように成長します。三歩進んで二歩下がるような感じです。それが迷路を抜けられる秘密なのでしょう。所々に株のように盛り上がった節がありますが、子実体になったとき、なるべく高い位置にあるとそれだけ胞子を遠くへ飛ばせるからといわれています。右は前夜に霧雨が降り水分が多すぎるためか溶けかかっているものもあり、節の形成があまり盛んではないようです。
マメホコリ(豆埃)ドロホコリ科 マメホコリ属。最も普通に見られる変形菌。未熟は美しいピンク色で、やがて黄褐色から灰茶褐色に変化。直径は約15ミリまで。表面 に黄色~暗褐色のうろこ状の突起があります。左の未熟は美しいピンク色で、小さな虫のエサにもなります。右は子実体で、まもなく割れて胞子を飛ばし始めるでしょう。近縁種に、高さ2~4ミリで円錐形のイクビマメホコリと高さ5ミリまでのコマメホコリがあります。
クダホコリ(管埃)ドロホコリ科 クダホコリ属 。左は子実体の未熟。最初は淡いピンクで濃くなり、だんだん黄土色に変わっていきます。希に紫になるものもあります。右が子実体。子実体形成まで時間がかかるため、ピンクまたは紅色の未熟体がよく観られます。子実体の高さは約5ミリ。他にコモチクダホコリ、エツキクダホコリ、オオクダホコリが知られています。倒木にたくさん発生するとまるで誰かがタラコをばら撒いたように見えます。
シロジクモジホコリ(白軸綟埃)モジホコリ科モジホコリ属。キノコはウラベニガサ。先端の青い丸い部分が胞子嚢(ほうしのう)です。希にキノコを食べる変形菌というのがあり、ナメコを食べるブドウフウセンホコリや、それ以外にもイタモジホコリもキノコを食べるということですが、このシロジクモジホコリについては、この写真だけではなんとも判定できません。ところで、モジホコリのモジですが、文字ではなく綟ではないかと思うのです。麻糸のことですがどうでしょう。モジホコリが広がっていく様が目の荒い麻布の様に見えます。モジホコリの写真は、下の『粘菌ペット「もじ太郎」』の記事でご覧いただけます。
ムラサキホコリ(紫埃)ムラサキホコリ科ムラサキホコリ属。長さは6~20mm。子実体の軸(基部)が比較的長く、接地面と胞子が離れています。すでに胞子をとばせる状態。触れたらたくさんの胞子が舞いました。ひとつの束は、およそ10から20の子嚢でできています。変種のサビムラサキホコリは軸が長く、高さの二分の一ほど。
トビゲウツボホコリ(鳶毛靫埃)ケホコリ科。赤松の樹皮が剥げた倒木上に発生していました。子実体ひとつの大きさは1ミリぐらい。右のカットは二日後。雨が降ったため胞子を飛ばす前に壊れてしまったものもありました。鮮やかな朱色は、森の中で異彩を放ちます。
ハシラホコリ(柱埃)ハシラホコリ科 ハシラホコリ属 。直径10センチぐらいで、高さは10ミリちょっと。既に乾いて倒木にははりついているというより置いてある状態でした。割ると太さ0.5ミリほどの円柱形の胞子嚢がびっしり。なかなかお目にかかれないちょっと珍しい粘菌です。
マツノスミホコリ(松墨埃)ムラサキホコリ科 ススホコリ属。赤松の切り株に雨後発生。山桜の花びらで、だいたいの大きさが分かります。触るとすぐに破れて真っ黒な粉状の胞子が舞い上がります。手や服に付くと大変。
ホネホコリ(骨埃)カタホコリ科ホネホコリ属。外壁は密集した石灰質の粒からなり、内壁は膜状です。軸はなくスライスした骨が朽木に張り付いているように見えます。
マンジュウドロホコリ(饅頭泥埃)ドロホコリ科 ドロホコリ属。発生初期は白色で中はクリーム色。やがて写真のように銀色になりシワが出来ます。内部はコーヒー色のゲル状ですが、皮を破って一日置くとチョコレート色になり固くなりました。直径1~5センチですが、写真のものは約3センチ。右の写真は新しいスウィーツに見えます。
コウツボホコリ(小靫埃)ウツボホコリ科ウツボホコリ属。ウツボホコリより小さく高さ3ミリぐらいまで。乾くと弾性のある網目状になり、胞子をはじき飛ばします。まるでどこかの惑星に下り立ったような異次元の風景のように見えます。
●『粘菌ペット「もじ太郎」』:国立科学博物館でいただいた変形菌(粘菌)のモジホコリの飼育の記事
では、粘菌は食べられるかというと、有名な話ではメキシコである種の粘菌が、フライの衣として利用されたとか、中国では「太歳」と呼ばれる地中にできる大きな粘菌が、バラの香りがし肉のような歯触りといわれていますが、どうなんでしょう。私はクダホコリやツノホコリを舐めたことがありますが、いわゆる樹液臭く美味しいというものではありませんでした。思わぬ毒性がないともいえないので真似しない方がいいと思います。
また、カビやキノコを食べる粘菌もいますし、粘菌の食べ物であるバクテリアを育成するというある粘菌の実験結果がNatureに発表されたこともあります。食物連鎖というのは、必ずしも大が小を食べるというような一方的なものではなく、実はかなり複雑だということが分かります。進化(evolution)という和訳から、なにか進化は進歩のように誤解しがちですが、進化は単に、生物の形質が世代を経る中で変化していく現象のことであって、進化には進歩の意味はありません。進化の結果、絶滅することもあり得るわけです。また、進化に目的はなく、突然変異に自然選択がはたらいた結果にすぎません。ですから、粘菌がこれからどう進化していくかというのは全くの未知なのです。ただ、愚かな人類の営みによって増えた放射性物質を生き延びる粘菌が出て来る可能性はあるといえます。放射性物質を食べる菌類はチェルノブイリで発見されています。粘菌の研究はまだまだこれからの様です。
拙書『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林では、『怪しくも美しい「粘菌」も宇宙船地球号の乗組員』というエッセイを載せています。写真とともに粘菌についてや、真正粘菌研究の先駆者、南方熊楠(みなかたくまぐす)について記しています。
■粘菌の妖しく奇妙で美麗なマクロの世界にあなたを誘います。決して特別なものではなく、梅雨の雨上がりの庭や公園の倒木や切り株でも見られます。虫眼鏡を持って探してください。きっと虜になります。BGMは、私が大好きなエリック・サティです。タイトルをクリックするとYouTubeのページが開きます。ぜひハイビジョンでご覧ください。
【信州の里山】妻女山の変形菌(粘菌)その1 Japanese Myxomycetes vol.1
【信州の里山】妻女山の変形菌(粘菌)その2 Japanese Myxomycetes vol.2
【日本の里山】森の変形菌(粘菌)Japanese Myxomycetes
◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。
★本の概要は、こちらの記事を御覧ください。
★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
写真は節を形成し成長途中のキフシススホコリ。体内には秒速1mmを越える原形質流動が起きており、肉眼では確認できないほどゆっくりと移動することができます。
驚くべきことに変形菌には迷路を抜けられる能力があるという。
●「粘菌に「知性」はあるか――。単細胞生物に「人間らしさ」の起源を探る、孤高の研究」北海道大学 中垣 俊之 教授:2008年にイグノーベル認知科学賞を受賞「物理エソロジー」とは。「単細胞だから単純などというのは、とんでもない誤解です。粘菌が持っている脳も神経も使わない情報処理システムは、原理的にすべての生物が持っている基本的な土台です。その意味で、あらゆる生物は知的である。これが単細胞生物の物理エソロジーに挑戦する、私の基本的な理解です」
●「脳を持たない粘菌が集団行動する秘密」生物物理学者 澤井 哲氏 「種の存続のために自己犠牲を払う利他的行動」:粘菌のことを非常に分かりやすく解説されています。
ツノホコリ(角埃)。原生粘菌類に属するツノホコリ科ツノホコリ属の粘菌。世界に三種、日本にあるのは一種。変種にはほかに、枝分かれしないエダナシツノホコリ、丸いタマツノホコリ、縮れたカンボクツノホコリとナミウチツノホコリがあります。高さは2ミリ前後。ごく普通に見られる粘菌です。他とは違い、透明な棍棒状の子実体の周りに柄のついた白い胞子嚢をつけます。周りに白く粉状に見えるものがそうです。胞子嚢がまだ未完成のものは透明に見えます(左の写真の下部。黄色と黒の虫は粘菌を食べるテントウムシの幼虫)。
エダナシツノホコリ(枝無角埃)ツノホコリ科ツノホコリ属。高さは2ミリ前後。半透明で、触るとゼリー状につぶれました。普通に見られる原生粘菌です。
タマツノホコリ(玉角埃)ツノホコリ科ツノホコリ属。ツノホコリの変種。別名は、タマサンゴホコリ。ツノホコリに似ていますが、子実体は蜂の巣状。小さな甲虫が写っています。粘菌は小さな虫の餌になることもあるらしく、ベニホタルの仲間も粘菌ではよく見かけます。右の写真は外生胞子を飛ばし始めている状態のようです。
ススホコリ(煤埃)モジホコリ科ススホコリ属。子実体は黄色い色素を含んだ石灰質で覆われています。 石灰質顆粒からなる外皮はもろく剥がれやすい。朽木に発生するわりとよく見られる粘菌です。左の写真の白い部分は、変形体が動いてきた痕です。
キフシススホコリ(黃節煤埃)モジホコリ科ススホコリ属。原形質流動は、一進一退を繰り返し、波打つように成長します。三歩進んで二歩下がるような感じです。それが迷路を抜けられる秘密なのでしょう。所々に株のように盛り上がった節がありますが、子実体になったとき、なるべく高い位置にあるとそれだけ胞子を遠くへ飛ばせるからといわれています。右は前夜に霧雨が降り水分が多すぎるためか溶けかかっているものもあり、節の形成があまり盛んではないようです。
マメホコリ(豆埃)ドロホコリ科 マメホコリ属。最も普通に見られる変形菌。未熟は美しいピンク色で、やがて黄褐色から灰茶褐色に変化。直径は約15ミリまで。表面 に黄色~暗褐色のうろこ状の突起があります。左の未熟は美しいピンク色で、小さな虫のエサにもなります。右は子実体で、まもなく割れて胞子を飛ばし始めるでしょう。近縁種に、高さ2~4ミリで円錐形のイクビマメホコリと高さ5ミリまでのコマメホコリがあります。
クダホコリ(管埃)ドロホコリ科 クダホコリ属 。左は子実体の未熟。最初は淡いピンクで濃くなり、だんだん黄土色に変わっていきます。希に紫になるものもあります。右が子実体。子実体形成まで時間がかかるため、ピンクまたは紅色の未熟体がよく観られます。子実体の高さは約5ミリ。他にコモチクダホコリ、エツキクダホコリ、オオクダホコリが知られています。倒木にたくさん発生するとまるで誰かがタラコをばら撒いたように見えます。
シロジクモジホコリ(白軸綟埃)モジホコリ科モジホコリ属。キノコはウラベニガサ。先端の青い丸い部分が胞子嚢(ほうしのう)です。希にキノコを食べる変形菌というのがあり、ナメコを食べるブドウフウセンホコリや、それ以外にもイタモジホコリもキノコを食べるということですが、このシロジクモジホコリについては、この写真だけではなんとも判定できません。ところで、モジホコリのモジですが、文字ではなく綟ではないかと思うのです。麻糸のことですがどうでしょう。モジホコリが広がっていく様が目の荒い麻布の様に見えます。モジホコリの写真は、下の『粘菌ペット「もじ太郎」』の記事でご覧いただけます。
ムラサキホコリ(紫埃)ムラサキホコリ科ムラサキホコリ属。長さは6~20mm。子実体の軸(基部)が比較的長く、接地面と胞子が離れています。すでに胞子をとばせる状態。触れたらたくさんの胞子が舞いました。ひとつの束は、およそ10から20の子嚢でできています。変種のサビムラサキホコリは軸が長く、高さの二分の一ほど。
トビゲウツボホコリ(鳶毛靫埃)ケホコリ科。赤松の樹皮が剥げた倒木上に発生していました。子実体ひとつの大きさは1ミリぐらい。右のカットは二日後。雨が降ったため胞子を飛ばす前に壊れてしまったものもありました。鮮やかな朱色は、森の中で異彩を放ちます。
ハシラホコリ(柱埃)ハシラホコリ科 ハシラホコリ属 。直径10センチぐらいで、高さは10ミリちょっと。既に乾いて倒木にははりついているというより置いてある状態でした。割ると太さ0.5ミリほどの円柱形の胞子嚢がびっしり。なかなかお目にかかれないちょっと珍しい粘菌です。
マツノスミホコリ(松墨埃)ムラサキホコリ科 ススホコリ属。赤松の切り株に雨後発生。山桜の花びらで、だいたいの大きさが分かります。触るとすぐに破れて真っ黒な粉状の胞子が舞い上がります。手や服に付くと大変。
ホネホコリ(骨埃)カタホコリ科ホネホコリ属。外壁は密集した石灰質の粒からなり、内壁は膜状です。軸はなくスライスした骨が朽木に張り付いているように見えます。
マンジュウドロホコリ(饅頭泥埃)ドロホコリ科 ドロホコリ属。発生初期は白色で中はクリーム色。やがて写真のように銀色になりシワが出来ます。内部はコーヒー色のゲル状ですが、皮を破って一日置くとチョコレート色になり固くなりました。直径1~5センチですが、写真のものは約3センチ。右の写真は新しいスウィーツに見えます。
コウツボホコリ(小靫埃)ウツボホコリ科ウツボホコリ属。ウツボホコリより小さく高さ3ミリぐらいまで。乾くと弾性のある網目状になり、胞子をはじき飛ばします。まるでどこかの惑星に下り立ったような異次元の風景のように見えます。
●『粘菌ペット「もじ太郎」』:国立科学博物館でいただいた変形菌(粘菌)のモジホコリの飼育の記事
では、粘菌は食べられるかというと、有名な話ではメキシコである種の粘菌が、フライの衣として利用されたとか、中国では「太歳」と呼ばれる地中にできる大きな粘菌が、バラの香りがし肉のような歯触りといわれていますが、どうなんでしょう。私はクダホコリやツノホコリを舐めたことがありますが、いわゆる樹液臭く美味しいというものではありませんでした。思わぬ毒性がないともいえないので真似しない方がいいと思います。
また、カビやキノコを食べる粘菌もいますし、粘菌の食べ物であるバクテリアを育成するというある粘菌の実験結果がNatureに発表されたこともあります。食物連鎖というのは、必ずしも大が小を食べるというような一方的なものではなく、実はかなり複雑だということが分かります。進化(evolution)という和訳から、なにか進化は進歩のように誤解しがちですが、進化は単に、生物の形質が世代を経る中で変化していく現象のことであって、進化には進歩の意味はありません。進化の結果、絶滅することもあり得るわけです。また、進化に目的はなく、突然変異に自然選択がはたらいた結果にすぎません。ですから、粘菌がこれからどう進化していくかというのは全くの未知なのです。ただ、愚かな人類の営みによって増えた放射性物質を生き延びる粘菌が出て来る可能性はあるといえます。放射性物質を食べる菌類はチェルノブイリで発見されています。粘菌の研究はまだまだこれからの様です。
拙書『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林では、『怪しくも美しい「粘菌」も宇宙船地球号の乗組員』というエッセイを載せています。写真とともに粘菌についてや、真正粘菌研究の先駆者、南方熊楠(みなかたくまぐす)について記しています。
■粘菌の妖しく奇妙で美麗なマクロの世界にあなたを誘います。決して特別なものではなく、梅雨の雨上がりの庭や公園の倒木や切り株でも見られます。虫眼鏡を持って探してください。きっと虜になります。BGMは、私が大好きなエリック・サティです。タイトルをクリックするとYouTubeのページが開きます。ぜひハイビジョンでご覧ください。
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【信州の里山】妻女山の変形菌(粘菌)その2 Japanese Myxomycetes vol.2
【日本の里山】森の変形菌(粘菌)Japanese Myxomycetes
◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。
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★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
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