7月11日(日)に長野盆地南部を襲った集中豪雨は、千曲市や松代町の果樹や野菜に大きな被害をもたらしましたが、私達が貝母や里山の保全活動をしている妻女山山系も壊滅的な被害を受けてしまいました。車では上がれないので徒歩で登りましたが、被害は予想以上のものでした。湿度は100%。クロメマトイが鬱陶しく纏わりつく中を通常の二倍ぐらいかけて登りました。
(左)妻女山展望台の裏の赤松の大木が地上5mぐらいで折れてしまいました。手前にある石碑に当たらなくて良かった。(右)駐車場奥の桐が二本倒れました。残った一本も傾いて倒れそうで大変危険です。これは伐倒しないといけません。
(左)妻女山松代招魂社はあれだけの暴風雨でも無事でした。ただオオムラサキは姿を消しました。あの暴風雨では生き残れないでしょう。新たな生命の羽化を待つしかありません。(右)鳥居の脇の妻女山の案内看板は根本から折れてしまいました。
(左)貝母群生地のある陣場平や天城山(てしろやま)、鞍骨山へ向かう林道を登ります。豪雨で林道(農道)が深くえぐれてしまいました。大きな穴が空いてしまった場所も。これでは車で登れません。秋にもし山火事が発生しても消防車が登れません。(右)三つ目のカーブに落葉松と山桜の倒木。人力では動かせません。その向こうには立ち枯れの山桜に倒木が掛り木になっていて非常に危険です。
(左)四つ目のカーブに落葉松の倒木。(右)その上には二本の落葉松の倒木。奥の落葉松は直径が50センチはあります。グラップルがないと危険で処理できません。他にも処理が必要な木が複数ありました。倒木の伐倒、特に掛り木や蔓が絡んだ木の伐倒は危険です。杉や檜の様な円錐形の樹木は重心が分かりやすいのですが、ヒノキやブナ科の広葉樹や複雑にねじれた赤松などは重心が分かりにくいので危険です。私達も何度か予測と違う倒れ方で危険な目に会ったことがあります。熟知しているはずの経験豊富なプロでも事故に巻き込まれることもあるのです。そういう訳で現在は、ハーベスターとか近代的な伐倒製材の機械が活躍しているのです。YouTubeでそんな動画がたくさんあがっているので興味のある方は観てください。凄いです。
確かに他の人名が奪われた大災害に比べれば微々たるものでニュースでも取り上げられませんが、逆にこれを復旧するのは非常に大変なのです。重機がないと無理ですし、かといって行政も簡単には動いてくれません。他にも災害地がありますし。しかし、復旧させないと陣場平の保全活動や山仕事もできません。大変な問題です。
(左)長坂峠と陣場平の間の樹液バー。何もいません。普通ならばカブトムシ、オオムラサキ、オオスズメバチやアオカナブンなど多彩な昆虫が吸汁する姿が見られるのですが。(右)陣場平入り口のオニグルミが暴風雨でたくさん落ちていました。
妻女山里山デザイン・プロジェクトで保護活動をしている貝母(編笠百合)の群生地がある陣場平。幸い被害は見られません。ここの標高は530mぐらいですが、被害が大きかったのは麓に近い370mぐらいから450mぐらいまでに集中していました。林道の状況は全体に渡って酷いものでした。長坂峠までカーブが六つありますが、その上部にカーブに雨水が流れ込まないようにゴム板を埋め込む必要があると思います。
(左)陣場平の中央にあるクマノミズキの実も大きくなってきました。(右)誰も行かない森の奥へ。幻のハナビラニカワタケを探しに。まだ発生していませんでした。梅雨明けを待ちましょう。
(左)陣場平の貝母。ほとんど枯れて倒れましたが、まだ種を飛ばしていないものも。(右)こんな風に六枚の羽がある実の中に三列に縦に種が並んでいます。乾燥するとこれが弾けて散らばるのです。多くは真下に落ちますが、強い東風(こち)が吹いているとかなり西まで飛んでいきます。山中でこれだけの貝母の群生地が観られるのは日本でここだけです。見事な満開の景色は、当ブログの毎年の4月の記事をアーカイブで観てください。毎年地元はもとより全国各地から大勢の方が訪れます。
木漏れ日の当たるヒヨドリバナで吸蜜するスジグロシロチョウ(筋黒白蝶)アゲハチョウ上科シロチョウ科。畑や庭ではモンシロチョウがよく見られますが、山間部ではスジグロシロチョウがよく見られます。幼虫の食草はタネツケバナやハタザオなどアブラナ科の植物。
雨が多いので色々なキノコが出ています。傘の裏が網の目状なのでイグチ科のキノコだとは思うのですが同定できません。
小さなキノコ。キシメジ科だろうとは思うのですが、発生の時期と形態でヌナワタケが一番近い感じですね。
妻女山展望台の階段の踊り場で見つけたキノコ。傘の独特な模様からモエギタケ科のキノコかなと思ったのですが、これも同定できていません。
(左)ヤマハギ(山萩)マメ科ハギ属。花柄が長いので。妻女山にはマルバハギもあります。シジミチョウが好きな花です。(右)ヤマホタルブクロ(山蛍袋)キキョウ科ホタルブクロ属。亡き父が子供の頃、これに蛍を入れて遊んだと話していました。で蛍袋という名がついたのでしょうか。
妻女山展望台から望む茶臼山。右奥に神話の山、虫倉山。両山とも拙書に載せていますが、歴史ある自然豊かな里山です。梅雨が開けるまで北アルプスは望めそうにありません。
北側には長野市民の山、飯縄山。都民が高尾山に登る様に、長野市民はたいてい登ったことがある山です。高尾山薬王院の祭神は飯縄権現。馴染みが深いのです。もちろん拙書でも詳しく紹介しています。手前の千曲川は大雨で茶色です。河川敷では台風19号で堆積した土砂を取り除いて川幅を広げる工事が行われています。
今回の被害は、アマチュアでは危険すぎて手が出せないので市に相談してみようと思います。梅雨があけると全国からハイカーや歴史マニア、トレラン愛好家、サイクリスト、愛鳥家などが大勢訪れる人気の里山ですから。とりあえず14日(水)に林道入口に「倒木で通行止め 徒歩は可」の看板を下げました。間違って車で登ると、二曲がりバックで戻らないといけないので。
◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。
★本の概要は、こちらの記事を御覧ください。
★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
(左)妻女山展望台の裏の赤松の大木が地上5mぐらいで折れてしまいました。手前にある石碑に当たらなくて良かった。(右)駐車場奥の桐が二本倒れました。残った一本も傾いて倒れそうで大変危険です。これは伐倒しないといけません。
(左)妻女山松代招魂社はあれだけの暴風雨でも無事でした。ただオオムラサキは姿を消しました。あの暴風雨では生き残れないでしょう。新たな生命の羽化を待つしかありません。(右)鳥居の脇の妻女山の案内看板は根本から折れてしまいました。
(左)貝母群生地のある陣場平や天城山(てしろやま)、鞍骨山へ向かう林道を登ります。豪雨で林道(農道)が深くえぐれてしまいました。大きな穴が空いてしまった場所も。これでは車で登れません。秋にもし山火事が発生しても消防車が登れません。(右)三つ目のカーブに落葉松と山桜の倒木。人力では動かせません。その向こうには立ち枯れの山桜に倒木が掛り木になっていて非常に危険です。
(左)四つ目のカーブに落葉松の倒木。(右)その上には二本の落葉松の倒木。奥の落葉松は直径が50センチはあります。グラップルがないと危険で処理できません。他にも処理が必要な木が複数ありました。倒木の伐倒、特に掛り木や蔓が絡んだ木の伐倒は危険です。杉や檜の様な円錐形の樹木は重心が分かりやすいのですが、ヒノキやブナ科の広葉樹や複雑にねじれた赤松などは重心が分かりにくいので危険です。私達も何度か予測と違う倒れ方で危険な目に会ったことがあります。熟知しているはずの経験豊富なプロでも事故に巻き込まれることもあるのです。そういう訳で現在は、ハーベスターとか近代的な伐倒製材の機械が活躍しているのです。YouTubeでそんな動画がたくさんあがっているので興味のある方は観てください。凄いです。
確かに他の人名が奪われた大災害に比べれば微々たるものでニュースでも取り上げられませんが、逆にこれを復旧するのは非常に大変なのです。重機がないと無理ですし、かといって行政も簡単には動いてくれません。他にも災害地がありますし。しかし、復旧させないと陣場平の保全活動や山仕事もできません。大変な問題です。
(左)長坂峠と陣場平の間の樹液バー。何もいません。普通ならばカブトムシ、オオムラサキ、オオスズメバチやアオカナブンなど多彩な昆虫が吸汁する姿が見られるのですが。(右)陣場平入り口のオニグルミが暴風雨でたくさん落ちていました。
妻女山里山デザイン・プロジェクトで保護活動をしている貝母(編笠百合)の群生地がある陣場平。幸い被害は見られません。ここの標高は530mぐらいですが、被害が大きかったのは麓に近い370mぐらいから450mぐらいまでに集中していました。林道の状況は全体に渡って酷いものでした。長坂峠までカーブが六つありますが、その上部にカーブに雨水が流れ込まないようにゴム板を埋め込む必要があると思います。
(左)陣場平の中央にあるクマノミズキの実も大きくなってきました。(右)誰も行かない森の奥へ。幻のハナビラニカワタケを探しに。まだ発生していませんでした。梅雨明けを待ちましょう。
(左)陣場平の貝母。ほとんど枯れて倒れましたが、まだ種を飛ばしていないものも。(右)こんな風に六枚の羽がある実の中に三列に縦に種が並んでいます。乾燥するとこれが弾けて散らばるのです。多くは真下に落ちますが、強い東風(こち)が吹いているとかなり西まで飛んでいきます。山中でこれだけの貝母の群生地が観られるのは日本でここだけです。見事な満開の景色は、当ブログの毎年の4月の記事をアーカイブで観てください。毎年地元はもとより全国各地から大勢の方が訪れます。
木漏れ日の当たるヒヨドリバナで吸蜜するスジグロシロチョウ(筋黒白蝶)アゲハチョウ上科シロチョウ科。畑や庭ではモンシロチョウがよく見られますが、山間部ではスジグロシロチョウがよく見られます。幼虫の食草はタネツケバナやハタザオなどアブラナ科の植物。
雨が多いので色々なキノコが出ています。傘の裏が網の目状なのでイグチ科のキノコだとは思うのですが同定できません。
小さなキノコ。キシメジ科だろうとは思うのですが、発生の時期と形態でヌナワタケが一番近い感じですね。
妻女山展望台の階段の踊り場で見つけたキノコ。傘の独特な模様からモエギタケ科のキノコかなと思ったのですが、これも同定できていません。
(左)ヤマハギ(山萩)マメ科ハギ属。花柄が長いので。妻女山にはマルバハギもあります。シジミチョウが好きな花です。(右)ヤマホタルブクロ(山蛍袋)キキョウ科ホタルブクロ属。亡き父が子供の頃、これに蛍を入れて遊んだと話していました。で蛍袋という名がついたのでしょうか。
妻女山展望台から望む茶臼山。右奥に神話の山、虫倉山。両山とも拙書に載せていますが、歴史ある自然豊かな里山です。梅雨が開けるまで北アルプスは望めそうにありません。
北側には長野市民の山、飯縄山。都民が高尾山に登る様に、長野市民はたいてい登ったことがある山です。高尾山薬王院の祭神は飯縄権現。馴染みが深いのです。もちろん拙書でも詳しく紹介しています。手前の千曲川は大雨で茶色です。河川敷では台風19号で堆積した土砂を取り除いて川幅を広げる工事が行われています。
今回の被害は、アマチュアでは危険すぎて手が出せないので市に相談してみようと思います。梅雨があけると全国からハイカーや歴史マニア、トレラン愛好家、サイクリスト、愛鳥家などが大勢訪れる人気の里山ですから。とりあえず14日(水)に林道入口に「倒木で通行止め 徒歩は可」の看板を下げました。間違って車で登ると、二曲がりバックで戻らないといけないので。
◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。
★本の概要は、こちらの記事を御覧ください。
★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。