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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

氷河期の生き残りウスバシロチョウ舞う陣場平。貝母の実はスクスク。シナノタンポポ咲く古墳に倒れる大杉(妻女山里山通信)

2022-05-12 | アウトドア・ネイチャーフォト
 梅雨のはしりの曇り空。時々日もさします。枯れて実がなり始めた貝母(編笠百合)の状況を見るために妻女山の陣場平へ登りました。途中で鞍骨山へ向かう夫婦と邂逅。ツキノワグマが淡竹の筍を食べに下りてくる時期なので注意してくださいとアドバイス。

 陣場平では、ウスバシロチョウ(薄羽白蝶)が舞い始めました。これからどんどん増えていきます。シロチョウといいますが、シロチョウ科ではなくアゲハチョウ科です。ウスバアゲハといった方がいいかも。ウスバシロチョウ属は,ユーラシア大陸や北アメリカに広く分布する寒冷な気候に適応した蝶で、氷河期の生き残りといわれます。まだ吸蜜できる花が少ないのが可愛そう。

 貝母の群生地がある陣場平は、第四次川中島合戦の際に、上杉謙信が七棟の陣小屋を建てたと伝わる平地です。周りの雑木林を切り払うとかなり広い場所で、海津城も間近に見えて本陣としては最適な場所だったのでしょう。

 貝母はかなり枯れて黄色くなってきました。山蕗も大きくなって採り時です。サンコウチョウとオオルリの鳴き声がします。

 貝母の実。これは一番大きなもので、直径が15ミリぐらいあります。その向こうに見える実は5ミリぐらい。作年ほどではありませんが、たくさん実がなっています。

 妻女山山系のあちこちでギンラン(銀襴)が咲き始めました。これはまだ蕾。ラン科キンラン属で、特殊な菌根菌と共生関係にあるため、移植しても繁殖できません。環境省の絶滅危惧II類(VU)で、長野県では準絶滅危惧種に指定されています。

 蕾に見えますが、これで満開の状態です。妻女山山系には各地に見られますが、大きな群生地はありません。気をつけて探さないと見つけられないでしょう。

 ホタルカズラ(蛍葛)。ムラサキ科ムラサキ属の多年草。つぼみや咲き始めは赤紫で、開くと青くなります。蛍の光に見立てた名前は素敵です。家族でよく登った神奈川県の生藤山を代表する花です。

 満開のツツジを見ようと堂平大塚古墳へ行ってビックリ。古墳に大杉が倒れていました。鞍骨山に登った8日(日)は、強い北風が吹いていたので倒れたのでしょう。古墳は大丈夫の様です。

 古墳を越えてアプローチの道まで覆いかぶさっています。折れた太い枝を何本も片付けました。これの伐採は困難です。グラップルで先の方を掴んで切らないと跳ねます。ダウンバーストでもあったのでしょうか。

 日陰のリュウキュウツツジ(琉球躑躅)も咲きました。

 レンゲツツジ(蓮華躑躅)は、しぼんだのもありますが、まだ見頃です。長野県には、湯の丸高原をはじめ群生地が各地にあります。見頃は6月中旬からです。レンゲツツジは、花、蜜、葉に毒があります。嘔吐、痙攣、麻痺、呼吸困難などの症状を起こす神経毒で大変危険です。 この蜜を吸った蜂のハチミツでの中毒例もあります。致死量は体重1kgあたり0.3mgで、なんと青酸カリの約15倍の強さ。吸うのはもちろん庭木では絶対に植えてはいけません。

 ウスバシロチョウは、交尾するとオスがメスにスフラギス(交尾後付属物)を付けます。交尾をしたメスが、他のオスと交尾できないようにする貞操帯の様なものです。このブログでは、何度かスフラギスの写真を載せています。ブログ内検索で探してください。今年も撮れるかもしれません。

 長坂峠のシナノタンポポ(信濃蒲公英)。シナノタンポポは、在来種カントウタンポポの亜種で、ともに染色体数が2倍体なので受粉しないと種子ができません。外見上は、写真のように総苞片全体の大きさが太く、外総苞片と内総苞片の先端の小角突起とが全く無く、緑色した外総苞片と内総苞片の色の濃さが薄いなどの特徴があります。昔、レイ・ブラッドベリの『たんぽぽのお酒』を読んだ時にどんな味のお酒なんだろうと思いました。

 妻女山の林道倉科坂線を少し入ったところから松代方面。左手前は桐の花。岩沢登山口からは、尼厳山、奇妙山への登山道があり、拙書でも載せています。両山とも山城の遺構があります。

 妻女山のあちこちにある広葉樹。実はこの木の正確な種名が分かりません。色々調べているのですが。かなり長い花穂が特徴的なので、すぐに分かると思ったのですが。図鑑でも全く同じものが出てきません。強いて言えばサワグルミ(沢胡桃)が一番近いのですが。沢胡桃の実は小さすぎて食用になりません。この木なんの木気になる木。
 どうやら、サワグルミで間違いない様です。

 戊辰戦争以降の戦没者を祀る「妻女山松代招魂社」。戊辰戦争の後で、松代藩が建立したもので、本殿の後に戊辰戦争での戦没者の石碑があります。以前このブログで、その名簿を載せたことがあります。妻女山展望台で、訪れた三組ほどの方に案内をしたのですが、設置してある絵図があまりにも酷くて実際の風景と全く照らし合わせができないと不評でした。しかも位置が間違っているのです。以前も何人もの人に苦情を言われました。現在の技術なら、実際の地形図から三次元に展開して作成できるはずです。看板屋に丸投げした長野市のあまりに杜撰な仕事ぶりには呆れます。壊れた床板や階段も修理されていません。多くの観光客や歴史マニアが訪れるのでなんとかして欲しいものです。

 仲間と栽培した黒大豆で作ったハンバーグ。黒大豆を電気圧力鍋で茹でてから半分ぐらい潰します。信州ではこれを半殺しといいます。別に自家製切り干し大根、ヒジキ、ニンジン、長ネギ、自家栽培椎茸を炒めて、創味のシャンタンと牡蠣ソースで味付け。これを黒大豆に合わせ、信州麹味噌、片栗粉、パン粉、全卵、干し小エビを入れて混ぜます。やや多めの油で揚げ焼きしたら出来上がり。余った分は、翌日に幻の小麦粉いがちくオレゴン5とゆめちから1をブレンドして手打ちうどんに。小松菜を入れていただきました。ソイミートは市販もされていますが、大豆や黒大豆があれば簡単に作れます。冷凍もできるので便利です。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

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