涼風を きみとわかちて 歩みゆく あまつ日の下 野は明るみて
世を憂ひ ひとりあゆみて 来し方を 振り向きて見る 君のまなざし
ひとびとよ 神の御技の 明るくも その胸に今 痛く染むるか
前を見て またゆかむとぞ いふ君を 止める手もなき 我は我かな
日を浴びて 胸の明るき さいはひを たれにかたらむ きみのほかには
あまつ日の ごときまなこの かなしみを しらずとおもふ きみあはれなり
さびしさは 夏の日差しの 照りかへし 澄み渡る空 ひかりみつる野
ともにゐて おなじ日差しを あふぎみて きみおもふとき われは目を閉づ
しずけさを いかにせむとは 思ひつつ 眠るわが身は 赤子のごとし
揺れ動く 人の世の波 とほくみて 岩戸の檻に 沈みゆく君
なにゆゑに くるしきといふ 汝が胸の 青き毒塗る 心臓の音
おろかなる 罪を重ねて おのれのみ 助からむとて 言ひ訳の無駄
ことのはを 賢く並べ 嘘を入れ 見栄えだけでも それらしく見せ
知りつつも 知らぬとぞいふ 人の世の 技の巧みに 生きつつも死す
責任を とれと人には 言うけれど 自分とるのは いやなのか馬鹿
やったこと やってないとは いうけれど みんなのまえで やったろう馬鹿
悪知恵の 回る頭で 考える 遠い逃げ道 警察封鎖
まったくもう 残念でした ここまでよ さっさとお縄に つけ馬鹿野郎
裏道を 逃げむとはして 浅知恵の 猿がバナナの 罠にかかった
洋梨の ごとくも甘き 夢を噛み 幸ひといふ 君を悲しむ
着ぐるみの 己のなかの 陰りたる まなこは闇に 濡れてただよふ
いかにして まこと伝へむ 弦の無き 琴をはじきて 夢歌ふ君
花園の 楽しき夢を 未だ来ぬ ときのゆくへに な語りそ君
われのみを うましとぞぜむ 馬鹿おとこ ひとり騒ぐに 負けるほかなし
いやなのだ ばかになるのは いやなのだ おまえのほうが ばかになればか
えらきひと なれぬおのれに いらだちて 男は威張る 弱きものへと
いやだとぞ 男が棘に 言ひ出せば 周りの者は 目と口を閉づ
要するに 虫のいどころ かはるまで 辛抱をする ほかはなきかな
いたましき 夢をかたりて 千歳なる 時を食ひ来ぬ 玉座の骸
うるはしき 乙女と思ひ いだきよせ くちびるを寄す 苦き小狸
ほしきもの あらゆるものを 手に入れて 蔵の鍵持つ 空っぽの馬鹿
来よといふ 声が聞こえる 彼方より 知らねどわかる あの声がいふ