世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

2016-02-01 05:27:56 | 月夜の考古学・本館

愛を学ぶためには
それを失うことが一番なのだ
だから若者は
木に打ち付けられて死んだ
十字架は
伐り倒され滅びていく
森の予言でもあったのだ

冷酷な悪魔のように
神の愛の大きさが
かえって人を苦しめることがある
人間の小ささこそが
龍のように巨大な心の闇を生むものだから
驕慢の飾りが少しでも
自分を大きく見せるものなら
時にはどうしようもなく迷ってしまう
それが人間というもの

もの言わぬ森の愛を背負って
若者は滅びていく
その向こうには
光が潮のようにひいていく世界がある
彼はそれを指差して言う
さあ行こう
暗がりの時を乗り越え
その向こうでもう一度出会うために

たとえ最後の森が焼き尽くされても
世界はたった一つの種の叫びでよみがえる
必ず

光よ 再びあれ



(2003年ごろ)




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