苦しいとき辛いとき、空を見上げるのは大切なことです。
うちの夫は、ラファエロの絵の中のアリストテレスのように、地上ばかりを指さして、暮らしていくことが大事なんだよと、そりゃもう口がすっぱいほど言いますが、私はプラトンのように空を指さし、心の問題だって大事なんだよって反論します。
そりゃ、稼ぐことも食べることも大事なことだけれど、私たちが人生の大きな壁にぶつかって、別離の危機を迎えてもそれを乗り越えることができたのは、私が暮らしには何の役にも立たない詩を書いていて、魂のことを学んでいたおかげです。わかってもらえなくて苦しかった時にも、空を見て、空を見るたび、自分を取り戻していました。どんなにあがいても、自分以外にはなれない自分自身を、空はいつも映しかえしてくれた。そして自分を取り戻させてくれた。
(2005年7月ちこり34号、言霊ノート)