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ニコラ・プッサン
プリュギアの王ミダスは、ある日自分の庭に迷い込んできたバッカスの師シレヌスを歓待した。それをよろこんだバッカスはミダスになんでも願いをかなえてやると言った。するとミダスは触れるものみな黄金に変わるように願った。バッカスは愚かだと思いつつもその願いをかなえてやった。ミダスは触れるものがみな黄金になるのを大よろこびで楽しんだが、飲むものや食べるものまで黄金になるのに気付くと、あわてて願いを撤回してくれと祈った。するとバッカスはパクトロス川の源泉でみそぎせよと答えた。そのとおりにするとミダスは元に戻った。それより後、パクトロス川で砂金がとれるようになったという。
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黄金は美しいものだが、愛ではない。愛のかたちのひとつです。それがすべてだという愛を、黄金のようなものと全くすり替えてしまうのは愚かだ。だが人間はよくそんなことをしてしまう。王女とはしためを勘違いしてしまうようなことを。真実を嘘と取り換えてしまうようなことを。ミダスの願いをかなえた神は、アポロンであるという説もあります。どちらにしろ人間の愚かさをあざ笑っているかのようだ。馬鹿なことになるのを承知でかなえてやるのですから。