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「セムド、そろそろ山へ行こう。山へ行くやつを決めてくれないか」
「それならもう、あらかた決まっている」
とセムドは言った。
「去年はクスダの周りのやつが行ったから、今年はキリナの周りのやつが行くことにするよ。みんな秋の山狩りには行きたがるが、オラブのこともあるし、村を空けるわけにはいかんからな」
セムドの言葉を聞いて、アシメックの眉が少し曇った。
「オラブか。いつも困らせる。やつが山に住んでいるらしいというのは本当か」
「山で見かけたやつはいないんだが。イタカで見かけたやつはいるらしい。山に隠れているのは本当だろうさ。隠れられるのはあそこくらいしかない。ネズミでもとって食っているんだろう」
セムドが苦々し気に言った。アシメックは目をそらして考え込んだ。馬鹿な奴だが、何とかしてやらねばならない。エルヅのように、いいところを見てやって、生かしてやれば、村で生きることができるだろうに。しかしそれにはまず、山に行ってやつを探さねばならないな。
アシメックは空を見た。この季節はあまり雨が降らない。明日も晴れそうだ。アシメックは言った。
「明日には山に行けるかな」
「声をかければすぐに集まるとも」
「では集めてくれ。明日の朝早くにすぐ出発だ」