世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

冬の子①

2017-11-17 04:13:10 | 風紋


山行きが終われば、急速に冬がやってくる。

村の広場に積まれた榾の山が、アシメックの家からも見えるようになる頃、風が冷たくなり始めた。アシメックはエルヅに言って、宝蔵の鹿皮の蓄えを出させ、村のみんなに分けた。

共有の財産である鹿皮を、宝蔵の管理人であるエルヅからもらうと、村人はそれを家の外幕にかけたり、屋内の床に敷いたりした。

カシワナの村の冬は、厳しいものだった。雪はそれほど降らないが、水は凍る。母親たちは子供のために肩掛けと足袋を縫ってやった。春や夏の間は裸で育てる子供も、冬は腰布や肩掛けをかけるのを許された。

先祖から伝わる鹿皮は相当にたくさんあった。冬の間、村人みんなを寒さから守ってやれるほどのものはあった。宝というのはすばらしい。大事にしていけば、みんなの役に立つ。エルヅの管理もすばらしいものだった。蓄えておくだけでなく、定期的に日干しにしてくれるので、古いものも傷みが少ない。

栗も充分にとれたし、米もたくさんあるし、鹿の干し肉もたくさんある。今年の冬も無事に超えられそうだと、アシメックは広場で榾の山を見上げながら思った。

アシメックも足袋で足を覆い、肩掛けをかけた。家に戻ると、ソミナが茅布を織っていた。




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