世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

鷲⑦

2018-02-09 04:12:41 | 風紋


「オラブが病気でも持ってくるのか?」
「わからん。とにかく、オラブと関係があることは確かだろう」

アシメックはミコルに礼を言うと、まずはとにかくイタカの野に足を走らせた。そこからはオラブが潜んでいる山が見える。アシメックは遠目に山を見ながら、未来を探ろうとした。空には鷲が舞っている。それが何かを意味しているようにも思えるが、何もわからない。

ケバルライ

ふと彼は誰かの声を聞いたような気がした。耳にではない。

ケバルライ

そう。ミコルが言っていた。心に神がささやいてくれる。そんな感じだ。

アシメックは目を閉じた。そしてその声を探ろうとした。すると心に、鮮やかに一つに幻影が現れた。

自分よりも大きな男だ。背中に鷲の翼がある。だが影になって顔はわからない。その男は、不思議に自分に似た声で、言うのだ。

イタカの野に細い川を描き
稲を歩かせ
豊の実りを太らせよ

アシメックは目を開けた。きいっと、どこかで鳥の声が聞こえた。いやそれは鳥の声ではなかったかもしれない。彼の心が驚いた音だったのかもしれない。

これは何かの予言か。ミコルにはわからないことを、神は直接おれに教えようとしているのか。それにしても、ケバルライとは何なのか。

気が付くと、アシメックは村への道を急いでいた。家の前に戻ると、サリクがそこで待っていた。目を輝かせ、手に白いコクリの花を持っている。

サリクは去年アシメックに言われたことを、まだ忘れていなかったのだ。

咲いた白いコクリの花を見て、アシメックの頭はいきなり現実に戻ってきた。そして高らかな声で、言った。

「稲刈りだ!!」






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