ジュール・エリー・ドローネー
ケンタウロスのネッソスは、ヘラクレスの妻ディアネイラをさらおうとしたところを、ヘラクレスに殺された。だが死の間際彼はディアネイラにささやいた。自分の血には媚薬の効果がある、ヘラクレスが心変わりしそうになったらそれを使えと。後にディアネイラは、ヘラクレスが美女イオレを手に入れた時、それを実行する。ヘラクレスの心をとどめたい一心で彼の下着にネッソスの血を塗ったのだ。だがその血には猛毒が含まれていた。その下着を着たヘラクレスは瀕死の重傷を負い、死を決意して自分の火葬の準備をし、ポイアスに火をつけてもらって死んだ。
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勇猛な男というのはよくこういう死に方をするものです。思い切った行動をし、その反動を身に浴びて死ぬのです。時々それは英雄とは思えないほどみじめなものになる。かのヘラクレスでさえ、それからは逃げられなかった。男にとっては死ほど恐ろしい敵はない。それに勝てた者はいない。