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彼は聖人として聖フランシスコという名で呼ばれることが多いが、ここではフランチェスコ・ダッシージという名で呼ぶ。なぜなら人間にはまだ、「聖」という称号は重すぎるからだ。
しかし彼は人間としてとても豊かな、すばらしい人生を送った。
勉学に励み、自分を磨いた。そして神よりの啓示をもとに、一生を人々のためにささげた。
彼が宗教活動に入るきっかけとなった神秘体験は、実際にあったことである。幻覚でも幻聴でもない。裏側の世界にいた何らかの高い存在が、彼を導いたのである。ジャンヌ・ダルクにもそういうことがあったが、こういう神秘体験は、まずはほとんどが嘘だが、まれに、真実であることがある。
フランチェスコ・ダッシージはまさにそのまれな例であった。それ相応の、勉強を積んだ魂だったのである。彼は使命をもって生まれてきたのだ。
人間は彼の人生に、人間としての努力の仕方を学ぶべきである。彼の努力は、実に人間らしかった。聖痕のエピソードなどはよけいなつけたしと言ってもよい。