暖かき天使である。
彼は指導者というよりも、みなの仲間という感じで人間に接した。仲間を暖かく包み、みなででっかい良いことをしていこうという天使だった。
だが彼は、ある悲劇的な事件により、二十代そこそこという年齢で急死した。存命中にできたことは、ある悪党をこらしめるということだけだった。ゆえに三国志は、すべてが偽史である。
なぜこういうことになったのか。それは、この人生を機に、この天使が人類の天使から撤退したからだ。その寒さのゆえに、彼を惜しんだ人間たちが、彼の人生を六十代まで伸ばし、彼を皇帝にまでのしあがらせ、壮大な偽史を創作したのだ。
実に、これは真実である。
このように人間は、天使を失うたびに、未練をひきずって過剰反応をする。三国志が今も人間の心に響いているのは、劉備玄徳の暖かさを、人間が忘れられないからだ。