このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
貧しい木こりの子だった与兵はお嬢様からいただいた高価な反物を売って学費に代え、法律を学んで検事になった。
その大恩あるお嬢様は大逆事件に関与したとの嫌疑をかけられて逮捕され、そのまま行方が分からなくなっていた。
時は容赦なく流れて行った。
やがて与兵はS高等検察庁の検事長まで登りつめた。
彼は職権を慎重に使って当時の調書をやっと入手したのだが、それはボロボロの表紙のみで中身はなかった。
その夜、与兵は庁舎に火をかけた。
紅蓮の炎が天を焦がすかと思うほど高々と立ちのぼり、彼の怒りを代弁していた。
与兵はそのまま汽車に乗り、数十年ぶりに故郷へ戻った。
お嬢様の大きな生家の裏山に登り、暮れ行く夕空をぼんやりと眺めていると、遠くの山の方から飛んできた一羽の鶴が彼の頭上で二度、輪を描いた。
ああそうか、オレはここから始まってここで終わるのだな。
与兵は穏やかにつぶやいた。