このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
「ちょうど10年前の3月末、法人事務局を置いていたグループホームカムパネルラへいつものように出勤すると、玄関に見慣れない茶のショートブーツがあった。
利用者様が靴を履く際に使うベンチの下にきちんと揃えられていて、どなたか家族様がいらしているのかな、とホールをのぞいたところ、翌月からグループホーム虔十の管理者に着任する予定のYさんが、食堂テーブルの脇にしゃがんで目線を低くしたうえで、利用者様のお話に耳を傾けていた。
重い認知症で、ここがどこなのかはおろか、自分が誰なのかも半ばわからなくなり、暴言を吐くこともしばしばだった男性利用者K様が、彼女へなにかを切々と訴えている。
その光景を目にして、僕は思った、これからの日々はまるで違ったものになるだろう、と。
あの時、胸に湧いた暖かい感情はなかなか忘れられるものじゃない。
僕の視線に気づいたYさんは照れくさそうに立ち上がるとK様に一礼して、その場を離れた。
僕たちは事務室で翌月からのことを熱心に打ち合わせた。
そこへ、調理員のHさんがお手製のごま団子を運んできた。
彼女が帰った後、手をつけられずに残った団子を見つめていると、茶碗を下げに再度入室したHさんから、立派なお嬢さんですねえ、理事長、と心底感じ入った口調で声を掛けられた。
その言葉に免じて、僕は喉元まで出かかっていた小言を飲み込むことにした。」