このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
新型コロナウイルスの感染を恐れてだろう、人出のまったくない仮設住宅のメインストリートを、大きなアマビエがまっすぐこちらへ歩いてくる。
知らん顔をしてやり過ごそうか、「ご苦労さまです」とねぎらいの声を掛けようか、迷っていると、2メートルほど手前でそれは立ち止った。
ソーシャル・ディスタンスを心得ているなんて、しゃれた妖怪だな。
僕も立ち止まって、対峙した。
すると、アマビエの両脇からほっそりとした白い腕が突き出て、その頭部をすっぽりと持ち上げた。
ざしき童子だった。
なんだ、きみか、脅かすなあ。
大げさに驚いて見せたが、彼女がなぜそんないでたちなのか、察するにたやすかった。
困っている方々のことを思い、安息を願って、居てもたってもいられなくなったのだろう。
「このコロナ禍で、全国各地から自分の思いを押し付けてくるボランティアが来れなくなったのは、せめてもの幸いですね。ほら、きみはぐいぐい来るひとが苦手だから。」
「誰だって苦手ですわ」
すねた顔を見せたあと、彼女はカラカラと笑った。
僕もつられて笑った。
笑いながら、目が覚めた。
夢だったのか。
周囲を見渡すと、つぶらな目をした小さなアマビエこけしがサイドテーブルの上にぽつんと載っていた。