電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

片岡啓子「イタリア古典歌曲集」を聴く

2011年06月05日 06時02分47秒 | -オペラ・声楽
この一週間、通勤の音楽として聴いていたのは、片岡啓子(Sp)、ガブリエレ・ピサーニ(Pf)のコンビによる、「イタリア古典歌曲集」でした。DENON のクレスト1000シリーズの中の一枚で、COCO-70469という型番のCDです。片岡啓子さんといえば、本場イタリアで、ヴェルディのオペラで鳴らしたドラマティック・ソプラノです。そして、歌をサポートするのが、ミラノ・スカラ座のピアニストであるピサーニということですから、もうそれだけで、イタリア・オペラ好きの血が騒ぎます。女性の年齢を詮索するのは失礼ながら、たしかほぼ同世代ではなかったかと思います。

収められたイタリア古典歌曲は次のとおり。

1. いとしい女よ~カロ・ミオ・ベン(ジョルダーニ)
2. 愛に満ちた処女よ(ドゥランテ)
3. あなたへの愛を捨てることは(ガスパリーニ)
4. 私は心に感じる(A.スカルラッティ)
5. 樹木の蔭で~ラルゴ(ヘンデル)
6. お前は私を苦しめていなかったのに(チェスティ)
7. もはや私の心には~うつろの心(パイジェッロ)
8. アマリッリ~マドリガーレ(カッチーニ)
9. 菫(A.スカルラッティ)
10. いとしい絆よ(ガスパリーニ)
11. たとえつれなくても(ガルダーラ)
12. 眠っているのか美しい女よ(パッサーニ)
13. ああ私のやさしい熱情が(グルック)
14. お前を賛える光栄のために(ボノンチーニ)
15. 私の偶像である人の回りに~君が姿をめぐりて(チェスティ)
16. もし貴方が私を愛してくれて(ペルゴレージ)
17. 陽はすでにガンジス川から(A.スカルラッティ)
18. 愛の喜びは(マルティーニ)

「カロ・ミオ・ベン」は、非常に丁寧に、じっくりと表現しています。ドゥランテの「愛に満ちた処女よ」やガスパリーニの「あなたへの愛を捨てることは」などの、低音を生かしたピアノ伴奏も、シンプルですが実に魅力的です。ヘンデルの「樹木の蔭で」は、キャスリーン・バトルのCMで一世を風靡した「オンブラマイフ」ですね。カッチーニの「アマリッリ」の繊細な美感は、車の中ではとらえにくいもので、やっぱり自室のステレオで聴くに限ります。「ああ私のやさしい熱情が」は、たいへんドラマティックで、いかにもグルックらしいものです。最後のマルティーニ「愛の喜びは」まで、何度も繰り返すほどに、見事な歌唱に聴き惚れます。



ただし、CDに添付されたリーフレットによれば、録音されたのは1990年の秋、福島音楽堂とのこと。今から22年前の福島県では、人々は美しい音楽を楽しみ、特産の味覚を楽しんでいたことでしょう。記事を書くために録音データを確認して、思わず心が痛みました。

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