電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ドビュッシーの「ヴァイオリン・ソナタ」を聴く

2011年06月26日 06時03分12秒 | -室内楽
週末農業は、佳境に入っております。おそらく、佐藤錦の山場は過ぎて、まだ少し残る樹にとりかかる段階に入ったあたりでしょうか。

東北地方も梅雨入りしてしばらくたち、蒸し暑かったり涼しすぎたり、妙なお天気が続きます。こんなときは、気分だけでもひんやり涼やかに、ドビュッシーの音楽がよろしかろうと、最近は、通勤の音楽として、ドビュッシーの最後の作品、「ヴァイオリン・ソナタ」を繰り返し聴いておりました。先に実演を聴き(*1)、ご本人のサインをもらった、シュロモ・ミンツさんのCDにて。



第1楽章:アレグロ・ヴィーヴォ。別な曲の緩徐楽章みたいな始まりは、いかにもドビュッシーらしいです。とぎれとぎれの回想のような物思いの風情で、ピアノとヴァイオリンのひそやかな対話です。
第2楽章:間奏曲。幻想的かつ軽快に(Intermède. Fantasque et léger)。キュイッ、キュイーッというヴァイオリンの動機で始まります。気まぐれな表情は、すぐに活発なピアノとヴァイオリンによって変化し、感覚的な音楽が展開されます。
第3楽章:終曲。きわめて活発に(Finale. Très animé)。前の楽章の印象を引き継ぎながら、超高音を操る、高度な技巧を駆使した音楽であるように感じます。

シュロモ・ミンツさんの演奏は、とても集中度の高い、緊張感のあるものです。感覚を伸びやかに解き放つような方向ではなく、音楽を真摯に見つめ、考え抜くタイプのように感じます。美しい音で、技巧的なキレもすごいのですが、それが少しも不自然に感じさせず、納得させてしまう。CDに収録されているフランクのヴァイオリン・ソナタもラヴェルのソナタも見事なものですが、とくにフランクに始まりラヴェルに終わる曲の配置が、言い換えれば、両者の間にドビュッシーのソナタが入るという絶妙の配置が、なるほどです。ボタンとシャクヤクの大輪の花の間にひっそりと咲く、夕暮れにほのかなリン光を放つ新種の花のような存在です。

■シュロモ・ミンツ(Vn)、イェフィム・ブロンフマン(Pf)-(G: UCCG-5099)
I=4'39" II=4'03" III=3'52" total=12'34"

(*1):山響第213回定期演奏会でボロディン、プロコフィエフ等を聴く~「電網郊外散歩道」2011年5月
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