山形交響楽団が、飯森範親音楽監督のもと、モーツァルトの交響曲全曲を演奏するプロジェクトが進行しています。題して「アマデウスへの旅」。これまでの成果は、CDや音楽配信などで発表されていますが、今回は第13回めになります。本日の曲目は、
今度はやけに多忙な職場で、いささかくたびれておりますが、山響モーツァルト定期といえば話は別です。昨夜の酒席の疲れで少々眠たいのですが、雨上がりの午後、山形テルサホールへでかけました。
ステージ上に、ヴァイオリンが対向配置で各4プルトの8、ヴィオラ6、チェロ5に、例によってファゴットが加わり、コントラバス3、ホルン2、オーボエ2という楽器編成です。
まず、交響曲第11番からです。第1楽章:アレグロ。第2楽章:アンダンテ。第3楽章:アレグロ。急-緩-急の3楽章構成ですね。若いモーツァルトの音楽は、響きが実に澄んでいるのと、弦楽セクション、とくにヴァイオリンがきらめくような輝きでした。
続いてピアノ協奏曲第26番「戴冠式」です。楽器編成は、独奏ピアノに、Fl(1)、Ob(2)、Fg(2)、Hrn(2)、Tp(2)、Timp.、弦5部(8-8-6-5-3)となっています。ホルンはナチュラルタイプ、バロック・トランペットにバロック・ティンパニを使用します。
第1楽章:オーケストラは、そう速くないテンポで、清塚信也さんの独奏ピアノが軽やかに始まります。現代のピアノは、迫力表現力とも大きいものですが、充分に鳴らしきるというのではなく、あくまでも軽やかに演奏されます。カデンツァもそれは見事に決まりました。後でわかったことですが、その場の即興だったとか。あまりの見事さに、まだ第1楽章の終わりなのに、思わずブラボーと拍手が入りました。
第2楽章:ラルゲット。はじめのピアノは右手だけで演奏されます。きっと、当時は左手で指揮をしていたのでしょう。よくコントロールされた、夢見るような気分にさせてくれるモーツァルトの音楽です。ピアノが第1・第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのトップと協奏した後、オーケストラ全体が入ってきて、アタッカで終楽章へ。
第3楽章:アレグロ。最初はオーケストラから。このあたり、昔はソリストがピアノから手を離して、オーケストラを指揮したのでしょう。やがて独奏ピアノが登場すると、下降したり上昇したり、めまぐるしく動きます。ピアノが第1・第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのトップと協奏する場面がここでも見られ、CDではわかりにくい、実演ならではの発見です。フルートやオーボエなどの管楽器が加わり、全奏へ。独奏ピアノが最初の主題を再現して管弦楽もこれに続き、繰り返されてコーダへ。いや~、華やか、かっこいい!
今日は、最前列の端の方を除き、ほぼ満員のお客さまでした。震災後、しばらくぶりにテルサホールがいっぱいになるのを見たような気がします。そのお客さんの拍手に答えて、披露したアンコールが、これまたすごかった!モーツァルトからプッチーニ、ガーシュインまで聞いたことのある旋律を詰め込んだ超アクロバティックな演奏。清塚信也さんが、モーツァルトをすっかり食ってしまったようですが、もしかすると当時のヴォルフガング君も、こんな感じだったのかな、と思ってしまうようでした。これが、若さというものでしょう。
ここで、15分の休憩です。
プログラムの後半は、モーツァルトの交響曲第25番、いわゆる「小ト短調」です。映画「アマデウス」の冒頭を飾る、あの印象的な曲です。ウィーンから帰ってきた17歳のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、同地で知った多くの作曲家の音楽、とくにヨーゼフ・ハイドンの音楽に強い影響を受けます。疾風怒濤の思潮がモーツァルトに示した刻印の一つが、この第25番の交響曲だった、と言っても過言ではないのでは。
楽器編成は、1st-Vn(8), 2nd-Vn(8), Vla(6), Vc(5), Cb(3), Ob(2), Fg(2), Hrn(4) というものですが、とくにフルート抜きでホルンが4本というところが目を引きます。
第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ。速めのテンポで始まった「小ト短調」の全奏の緊迫感。それに対比されるかのように流れる、オーボエの音がステキです。繰り返し出てくるオーボエと、それに続く緊迫した全奏、この対比が、荒々しく不安気な主題とともに、鋭い印象を与えます。ホルンを4本も使ったのに、ホルンの音が突出するわけではない。弦楽の中に溶け込みながら、異なる音を組み合わせて全体の中に響かせているのでしょうか。それが、フルートを持たない楽器編成の中で、暗めの、強い印象を与えるのかもしれません。
第2楽章:アンダンテ。ナチュラル・ホルンの水抜きに気をとられていて気づきませんでしたが、いつのまにかヴァイオリンが弱音器を付けていたのですね。鄙びた音色で始まり、ファゴットとの対話がおもしろい。リズムは柔軟でエレガントです。半数近い女性奏者のカラフルなドレスが、視覚的にも優雅さを見せていますが、音楽的にはやや暗めの陰翳を持った優雅さです。
第3楽章:メヌエット。やや速めのテンポで、強さを持ったメヌエットです。舞曲というよりは、もっと別なものになっているようです。トリオ部は、がらりと表情が変わり、田舎風ののどかなフレーズが管楽アンサンブルで見事に奏され、指揮者もここは「おまかせ」といった風情で、思わず心の中でブラボーを叫びました(^o^)/
再び暗く強い、えぐるようなアクセントの音楽に。対比の妙でしょうか。
第4楽章:アレグロ。前の楽章の主題とよく似たテーマで、しかしやや柔らかめに始まりますが、じきに強い緊張感に満ちた音楽に変わって行きます。山響の弦楽セクションの感度の高さがびんびんと伝わる強弱の対比、切れ込みの鋭いシンコペーション、リズム。そして管楽セクションの大健闘です。あ~、いい演奏を聴きました!
一緒に行った妻が少々体調不良で、交流会もそこそこに引き上げてしまいましたが、ピアノ独奏者の清水さんが、交流会参加者を笑わせ、大いに盛り上げていたみたいでした。ピアノだけでなく、話術も達者な方のようです。こんどはもっと別な曲で、また聴いてみたい若手ピアニストです。
(1) 交響曲第11番 ニ長調 K.84
(2) ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」K.537 , Pf:清塚信也
(3) 交響曲第25番 ト短調 K.183
今度はやけに多忙な職場で、いささかくたびれておりますが、山響モーツァルト定期といえば話は別です。昨夜の酒席の疲れで少々眠たいのですが、雨上がりの午後、山形テルサホールへでかけました。
ステージ上に、ヴァイオリンが対向配置で各4プルトの8、ヴィオラ6、チェロ5に、例によってファゴットが加わり、コントラバス3、ホルン2、オーボエ2という楽器編成です。
まず、交響曲第11番からです。第1楽章:アレグロ。第2楽章:アンダンテ。第3楽章:アレグロ。急-緩-急の3楽章構成ですね。若いモーツァルトの音楽は、響きが実に澄んでいるのと、弦楽セクション、とくにヴァイオリンがきらめくような輝きでした。
続いてピアノ協奏曲第26番「戴冠式」です。楽器編成は、独奏ピアノに、Fl(1)、Ob(2)、Fg(2)、Hrn(2)、Tp(2)、Timp.、弦5部(8-8-6-5-3)となっています。ホルンはナチュラルタイプ、バロック・トランペットにバロック・ティンパニを使用します。
第1楽章:オーケストラは、そう速くないテンポで、清塚信也さんの独奏ピアノが軽やかに始まります。現代のピアノは、迫力表現力とも大きいものですが、充分に鳴らしきるというのではなく、あくまでも軽やかに演奏されます。カデンツァもそれは見事に決まりました。後でわかったことですが、その場の即興だったとか。あまりの見事さに、まだ第1楽章の終わりなのに、思わずブラボーと拍手が入りました。
第2楽章:ラルゲット。はじめのピアノは右手だけで演奏されます。きっと、当時は左手で指揮をしていたのでしょう。よくコントロールされた、夢見るような気分にさせてくれるモーツァルトの音楽です。ピアノが第1・第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのトップと協奏した後、オーケストラ全体が入ってきて、アタッカで終楽章へ。
第3楽章:アレグロ。最初はオーケストラから。このあたり、昔はソリストがピアノから手を離して、オーケストラを指揮したのでしょう。やがて独奏ピアノが登場すると、下降したり上昇したり、めまぐるしく動きます。ピアノが第1・第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのトップと協奏する場面がここでも見られ、CDではわかりにくい、実演ならではの発見です。フルートやオーボエなどの管楽器が加わり、全奏へ。独奏ピアノが最初の主題を再現して管弦楽もこれに続き、繰り返されてコーダへ。いや~、華やか、かっこいい!
今日は、最前列の端の方を除き、ほぼ満員のお客さまでした。震災後、しばらくぶりにテルサホールがいっぱいになるのを見たような気がします。そのお客さんの拍手に答えて、披露したアンコールが、これまたすごかった!モーツァルトからプッチーニ、ガーシュインまで聞いたことのある旋律を詰め込んだ超アクロバティックな演奏。清塚信也さんが、モーツァルトをすっかり食ってしまったようですが、もしかすると当時のヴォルフガング君も、こんな感じだったのかな、と思ってしまうようでした。これが、若さというものでしょう。
ここで、15分の休憩です。
プログラムの後半は、モーツァルトの交響曲第25番、いわゆる「小ト短調」です。映画「アマデウス」の冒頭を飾る、あの印象的な曲です。ウィーンから帰ってきた17歳のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、同地で知った多くの作曲家の音楽、とくにヨーゼフ・ハイドンの音楽に強い影響を受けます。疾風怒濤の思潮がモーツァルトに示した刻印の一つが、この第25番の交響曲だった、と言っても過言ではないのでは。
楽器編成は、1st-Vn(8), 2nd-Vn(8), Vla(6), Vc(5), Cb(3), Ob(2), Fg(2), Hrn(4) というものですが、とくにフルート抜きでホルンが4本というところが目を引きます。
第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ。速めのテンポで始まった「小ト短調」の全奏の緊迫感。それに対比されるかのように流れる、オーボエの音がステキです。繰り返し出てくるオーボエと、それに続く緊迫した全奏、この対比が、荒々しく不安気な主題とともに、鋭い印象を与えます。ホルンを4本も使ったのに、ホルンの音が突出するわけではない。弦楽の中に溶け込みながら、異なる音を組み合わせて全体の中に響かせているのでしょうか。それが、フルートを持たない楽器編成の中で、暗めの、強い印象を与えるのかもしれません。
第2楽章:アンダンテ。ナチュラル・ホルンの水抜きに気をとられていて気づきませんでしたが、いつのまにかヴァイオリンが弱音器を付けていたのですね。鄙びた音色で始まり、ファゴットとの対話がおもしろい。リズムは柔軟でエレガントです。半数近い女性奏者のカラフルなドレスが、視覚的にも優雅さを見せていますが、音楽的にはやや暗めの陰翳を持った優雅さです。
第3楽章:メヌエット。やや速めのテンポで、強さを持ったメヌエットです。舞曲というよりは、もっと別なものになっているようです。トリオ部は、がらりと表情が変わり、田舎風ののどかなフレーズが管楽アンサンブルで見事に奏され、指揮者もここは「おまかせ」といった風情で、思わず心の中でブラボーを叫びました(^o^)/
再び暗く強い、えぐるようなアクセントの音楽に。対比の妙でしょうか。
第4楽章:アレグロ。前の楽章の主題とよく似たテーマで、しかしやや柔らかめに始まりますが、じきに強い緊張感に満ちた音楽に変わって行きます。山響の弦楽セクションの感度の高さがびんびんと伝わる強弱の対比、切れ込みの鋭いシンコペーション、リズム。そして管楽セクションの大健闘です。あ~、いい演奏を聴きました!
一緒に行った妻が少々体調不良で、交流会もそこそこに引き上げてしまいましたが、ピアノ独奏者の清水さんが、交流会参加者を笑わせ、大いに盛り上げていたみたいでした。ピアノだけでなく、話術も達者な方のようです。こんどはもっと別な曲で、また聴いてみたい若手ピアニストです。