シンポジウム「世界文学におけるオムニフォンの諸相」
科研費B「ポストエスニック時代の文学におけるオムニフォンの意義」による |
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日時:2012年12月8,9日
場所:明治大学和泉図書館ホール(1F) 東京都杉並区永福1-9-1(TEL 03-5300-1186)
主題と目的:(科研費共同研究の目的・趣旨)
越境、移民、植民、離散、強制移住等によって母語を喪失ないし異化し、文学創造に向かった越境的作家たちの諸作品に通底する多層的多重的な文学ディスクールのあり方を、ポストコロニアル文学理論やポストモダン文学理論といった歴史的視点のみならず、空間的な同時性をとらえる「群島的思考」から再検討することにより、そこに相互反響する「オムニフォン」の動的構造を解明し、さらに国民文学を超えゆくポストエスニック時代の文学の特質と可能性を探っていきたい。
■13:00-14:30 第1セッション(ドイツ語圏作家における多言語・文化性) 司会:土屋勝彦
コメンテーター:浜崎桂子 発表者: 山本浩司:ルーマニアの雉─ヘルタ・ミュラーにみる土俗性 関口裕昭:多文化地域ブコヴィーナと初期パウル・ツェラン ヘルタ・ミュラーはルーマニアにおけるドイツ語少数者文学の代表的作家であり、その文学に触れることはドイツ国民文学とは異なる時代的政治的な位相を浮上させることになる。またツェランの生まれたブコヴィーナは多言語文化に彩られる地域であり、その多声的な環境のなかでツェラン文学が胚胎したとも言える。このセッションでは、東欧地域におけるドイツ語圏作家の多層的多文化的な問題意識をともに考えたい。
■14:40-16:40
第2セッション(東欧語圏作家における多言語・文化性)
司会:沼野充義
発表者: 阿部賢一「Praha, Prag, Прага―多言語のプラハ」 加藤有子「ポーランド東部国境地帯における多言語的創造」 亀田真澄「分裂する言語のあいだで―セルビア多言語地域の少数民族と文学」 ロシア・ソ連はもともと多民族的帝国であるのに対して、中東欧は比較的狭い地域での多民族的共生・混淆、多言語的状況を際だった特徴としていた。そしてどちらも特に20世紀以降、亡命・越境といった現象が顕著になった。そのため、20世紀文学における越境性・多言語性に関して、この地域は突出している。しかし多様で複雑な地域であるだけに、安易な一般化をすることもできない。このセッションでは、ロシア東欧地域の多言語的状況と文学について、チェコ、ポーランド、セルビア・クロアチアのそれぞれの専門家に報告していただき、この地域の様々な現象を比較しながら、共通点と個別に異なっている側面を検討したい。
■16:50-17:30 総合討議
司会:土屋、沼野
■10:40-12:40 第3セッション(ダイアレクトから世界へ) 司会:今福龍太
発表者: 今福龍太「イントロダクション:俚言の政治学─ゲール、バスク、クレオール、アヤグ」 川満信一「ミクロ言語帯からの文学─スマフツの詩とスマヌパナス」 金子奈美「現代バスク文学のことば─キルメン・ウリベ『ビルバオ─ニューヨーク─ビルバオ』を例に」 中村隆之「沈黙する言葉(la parole muette)─モンショアシ、シャモワゾー」 方言、地方語、少数言語、マイナー言語、ミクロ言語、亜言語……。それをどのように呼ぼうと、ダイアレクトの局地性と限定性は、世界文学と呼ばれるものの示す普遍性やユニヴァーサリティの対極にある閉鎖的な実践であると見なされてきた。だが、国家語による言語統合の犠牲となりつつ、あくまでその言語政治学的権力の外部にとどまることによって、ダイアレクトは近代の文学空間を支配していた単一言語の権能を根底的に批判し、無化するための特権的な起点となりうる。ダイアレクトを意識的・戦略的に使用/濫用する新しい文学表現が、未知の世界性へと結ばれてゆく可能性について、アイルランド、バスク、マルティニック、琉球弧などのヴァナキュラーな詩のことばに依りながら検討したい。 ■13:30-15:30 第4セッション 「越えながら書く 台湾、日本、中国、アメリカ」 司会:管啓次郎
発表者: 温又柔「私のニホンゴには中国語と台湾語が棲んでいる」 林ひふみ「母語からの自由ということ」 リービ英雄「島国から大陸へ」 ■15:40-16:20 総合討議
司会:今福、管
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