戦前戦後の文芸を見ると、沖縄をテーマに書いた芥川賞作家のお一人が火野葦平さんだ。『琉球舞姫』は琉球に題材を求めた短編が9編収録されている。テーマで追いかけているジュリ(尾類、遊女)が登場する。美しい辻の女性と小説家の恋が描かれていたりする。写実的に時代を写し取っているように見える小説である。戦後戦争協力者として、監視下に置かれたことのある火野葦平と平良リエ子の愛の軌跡でもあろうか。それともひそかに平良リエ子に思いを寄せていた年下の宮崎さんのリエ子さんへのオマージュのようなノン・フィクションである。
十代に琉球舞踊を踊る彼女は美しい。老いてなお美しい女性。琉球舞踊と「山原」の物語はありし日の風景が浮かび上がる。生きている間の青春。琉球舞踊家の人生、ありし日の山之口獏や折口信夫などなど、『山原』をオアシスに集った面々の思いがどの辺にぶら下がっているのだろうか?