(1)この今の世の中で核兵器が実際に使われると思っている人はどれほどいるのだろうか。効果はあってもありすぎて、ついには使った側にも物理的な影響も含めて取り返しのつかない破壊被害影響が及ぶことになる。
こんな核兵器だからパラドックス(paradox)として核保有国が使うぞ、使うぞと脅しの効果はあり、唯一の戦争被爆国日本までもが米国の核の傘に守られているという安全保障だ。
(2)22年正月に夢のようなではなく、夢の話が飛び込んできた。米露英仏中の核保有5か国が「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」(報道)とする共同声明(statement)を発表した。
共同声明というところが問題で、結局は夢のように聞こえる。これまで米露が戦略核兵器削減協定、交渉も満足に進展しない中で、露プーチン大統領はクリミア編入に際して一時核兵器の使用を考えたと述べており、突然に降ってわいたような核保有先進5か国の核戦争拒否声明には新年の夢かと驚く。
(3)もちろん共同声明には核抑止論の「核兵器が存在し続ける限り、防衛、侵略の抑止、戦争の予防を目的とすべきだ」(報道)との文言もある。これまで核保有先進国が警戒、懸念していたのは、核保有先進国が核兵器を禁止、撤廃して、それに続く核保有後進国、イラン、北朝鮮のような核開発国が核兵器使用の脅威になることといわれていた。
(4)核兵器後進国には世界平和、秩序への共同責任、使命よりは核兵器を保有することにより他国を侵略、支配する権力専制主義がより強く感じられることで世界平和、秩序が守られないという危険、不安だ。
今回の共同声明は新年の夢物語なのか、そうした不安、警戒、懸念を飛び越して核保有先進5か国が核戦争拒否声明をだしたわけで、それならもっと早く国連の110か国、地域以上が参加する核兵器禁止条約に米露英仏中も参加すべきだった。
(5)そうして、結局は米国追随で、同調して核兵器禁止条約に参加していない唯一の戦争被爆国の日本の立場が行き場のない自主性のみえないものに仕立てられることになった。大国は自らの勝手、都合、思惑、戦略で行動するものだから、日本も主権、独立国家として信念、信条、理念に基づいて理路整然として自らの判断、決定で行動しなければならないということだ。
(6)ただし、大国間の協定、条約でさえ一方的な離脱、停止、解除が自国利益のために平然と実施されてきた中で、正月早々の「共同声明」がどれだけ効果を持つものか、「絵に描いた餅」にならないことを願うばかりだ。
(7)米露英仏中の核戦争拒否の共同声明は、世界の良心的な人類が求める核兵器不使用、廃絶、禁止ではなく、抑止力としては維持、行使するものであり、実体論は何も変わらないところが「正月の夢」に聞こえる。