いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

報道の公平と自由。 fairness and freedom in the news

2015-11-30 19:50:52 | 日記
 (1)報道番組は事実を伝えるだけでいいのか、いろいろある意見、考えを伝えて視聴者に考えてもらうのが使命なのか考えさせられることがあった。
 安保法制案が国会で審議されていた9月中旬にTBSTVの報道番組「news23」でアンカーマンの岸井成格さんが「メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだと私は思います」と発言したことに対して、「放送法遵守を求める視聴者の会」が放送法第4条の「政治的に公平」で「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにする」ことに「重大な違反行為」(報道)として全国紙に意見広告を出した。

 (2)政府、自民党も選挙報道に政権批判への偏向報道があるとメディアに圧力をかけたり、NHKのやらせ番組で所掌の総務相がNHKに指導介入するなど放送法を盾にメディアへの政治介入、圧力を強めている。

 放送法が遵守規定なのか放送事業者の自律規定なのか解釈問題はあるが、一方で放送法では「放送の不偏不党、真実及び『自律』(autonomy)を保障することによって、放送による『表現の自由』を確保する」ことも規定している。

 (3)不偏不党、公平性と表現の自由とのバランス感覚がいつも問題になる。ニュースもアナウンサーが「伝える」ニュース番組ものとキャスター、アンカーが「解説する」(explain)報道番組と二つの流れがある。

 報道番組の場合は、ニュースをもとに「多くの角度」から論点、問題点を紹介して、解説して、比較検証の上どうあるべきか結論をまとめるものが少なくない。

 (4)出来事を広く伝えるニュース番組と違って、テーマを絞って問題点、対立点のある時事ニュース、話題を取り上げて比較論証、検証するものが報道使命で、こういった報道番組ではむしろ結論のないものは拍子抜けでがっかり、色あせたものになってしまう印象を強く与える。

 報道番組は検証番組であるから多角的な意見、考えを解説して、比較検証して、問題点、論点を整理して解決の方向性を示すものでなければ期待に応えられない。

 (5)そういう意味からも報道の「公平性」(fainess)と「表現の自由」(freedom)の比重を考えるならば、公平性以上に表現の自由に軸足を置くものといえる。
 憲法で保障する自由と公共性の権利のバランス感覚はそれぞれの立場によって都合よく解釈されるもので、政治権力者はいつも公序良俗、公共性に力点を置いて自由も制限されるものと主張する。

 (6)そこでアンカーマンの岸井さんが安保法制案について「廃案に向けて声をずっと上げる続けるべきだと私は思います」と発言したことは、解説、検証の結論、方向性を番組として示したことであり、報道番組としてはあるべき使命、役割にもとづいた発言と理解すべきことだ。

 もしこれが「重大な(放送法の)違反行為」だとするならば、報道番組そのものの意味、意義、価値のないものとなり、アンカーマンの発言以上に番組そのものの存在意義(identity)が問われなければならない問題だ。

 (7)国民には「知る権利」がある。情報を伝える報道としては多角的な比較論だけでなく、専門的な見地からの理解、解決への方法理論を示して応えることも必要だ。

 岸井さんの発言で少し言うなら、廃案に向けた直接的な言い方ではなくて、安保法制が成立することによる(またその審議過程の)デメリットを強調してそちらに光を当てて、廃案の正当性を感じ取ってもらうレトリック(rhetoric)があってもよかった。

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監視と注意のパラドックス。 paradox of vigil watch and caution

2015-11-29 20:09:36 | 日記
 (1)安倍政権の「目的のためには手段を選ばない」現代政治風潮が経済、社会の変調に少なからずも影響していると書いたが、2014年政治資金収支報告書が公表された。

 安倍首相をはじめ自民党有力議員たちは億単位の政治資金を集めて、自民党への企業献金が20億円台と前年比13%増(報道)の大幅復活を見せた。安倍政権の経済界への主導政治で下請けと化した経団連が呼びかけて「アベノミクスへの恩恵が自民に還流する」(同)結果となった。

 (2)安倍首相の大企業優先の経済政策で企業業績回復効果が国民生活、地方へトリクル・ダウン(trickle down)するという構図は崩壊して、自然業績回復の企業が与党自民党へ献金として還流される甘えの構図に代わってしまっている。

 かっての自民党と経済界のゆ着構図の復活を強く印象づけるものだ。モノは使いようで安倍政権が企業の内部留保の増えた経済界に盛んに賃上げ、設備投資強化を要請しているのはけっこうなことだが、裏では企業献金の復活強化でもたれ合いの構図が浮かびあがってくる。

 (3)自民党が大臣規範で大規模資金パーティの開催を自粛すると定めているのに、14年の政治資金パーティは258件(報道)で収入1000万円以上の大規模パーティが安倍首相をはじめ麻生財務相、岸田外相、甘利経再相あわせて計10回開催されて、2億2600万円余り(同)も集めていた。

 「自粛」要請で罰則もない見せかけだけの規範で、自民党「実力者」たちは公然と大規模な政治資金パーティを開催して巨額の実利を上げていた。

 (4)安倍首相ほか関係団体は「毎年恒例で開催している『勉強会』で、規範には抵触するものではない」(報道)と回答しているが、勉強会と政治資金集めの大規模パーティがどう結びつくのか社会通念としてわからずに、開き直りのものでしかない。

 政治にカネがかかるといわれても、しかしその政治資金収支管理の意図的なズサンさ、未熟さが指摘されて、政治とカネの不正疑惑がつきない政治の世界で「カネ」の意味がまっとうなものとして考えられていない実態が、自ら決めたパラダイム(paradigm)を公然と平気で守らないという政治の現状だ。

 (5)こういう政治の有り様、手法が「目的のために手段を選ばない」政治となって源流をなして特定秘密保護法、安保法制の強行成立による国民不在政治に、また沖縄辺野古移設の代執行申請という安倍政権の強権政治へと流れているのだ。

 安倍首相は安保法制の国会審議では違憲批判の中で、憲法解釈の変更手法で強行成立をしておいて、国際会議では中国の南シナ海領域海洋進出に対しては国際法の遵守を守るよう訴えるという内外の「顔」を正反対に変える厚顔無恥を示しているのも、自民党の自ら決めた規範を守らない、公然と平気で破る政治体質に根差しているものだ。

 (6)大規模な政治資金パーティを勉強会と強弁し、政治資金収支報告書でも毎年のように社会通念上考えられない非常識な支出が指摘されて、繰り返されてきた。
 そもそも議員利害当事者の国会が定める政治資金規正法は「ザル法」と呼ばれて実効性のないものであり、それが自民党の規範にもあらわれてこういうものがいつまでもまかり通っているのは理解できない感覚だ。

 (7)それでいて「社会」だけはまっとうでいようなどとは、あり得ないことだ。彼ら(政治家)は振り込め詐欺に注意を促し、企業の内部留保に目を光らせ、マイナンバー制度で国民資産の管理強化をしようとしているが、パラドクス(paradox)として自らの政治とカネのパラダイム欠如の反映の社会を自らつくりだしているということである。

 国民としては逆に政治資金の中身についてまっとうなものとすべく監視と注意(vigil watch and caution)をしなければならない重い責任がある。

 

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心証と思い込み。impression and possession

2015-11-28 19:48:16 | 日記
 (1)東京都庁爆発物事件で殺人未遂ほう助に問われた元オウム真理教信者の菊池直子被告の控訴審裁判(2審)で東京高裁は1審の有罪判決を破棄して「無罪」を言い渡した。

 具体的な物的証拠のない裁判で判決理由は「被告は指示通りの作業を実行するに過ぎない『立場』で、テロ計画を知らされたとうかがわせる証拠はない」(判決報道)というものだ。(『』は本ブログ注、以下同じ)

 (2)事件は「教団元幹部らが都知事宛てに送った郵便物が爆発し、開封した都職員が負傷(指切断ー本ブログ注)した」(報道)もので「被告は事件前に山梨県内の教団施設から爆発物の原料となる薬品を都内のアジトに運んで事件の手助けをした」(同)として起訴されていた。

 被告側は薬品の中身を知らずに計画も聞かされていなかったと無罪を主張していた。指紋などの物的証拠もなく、すでに地下鉄サリン事件で逮捕、死刑が確定していた元幹部たちの当時の事件にかかわる証言が有力根拠の裁判となっていた。

 (3)20年前の事件についてほとんどの元幹部の証言が「あいまい」(報道)な中で、中心としてかかわった元幹部(死刑囚)が当時の内容について「詳細で具体的」(判決報道)に証言をして、1審では有罪となり2審高裁では逆に「他の多くの証人が当時の記憶を思い出すのに苦労する中、『不自然』に詳細で具体的」(同)な証言として、これを信用できないとして無罪の判決とした。

 ちなみに1審は裁判員裁判で2審は裁判官裁判であった。1審から傍聴したジャーナリストの江川紹子さんは「控訴審は(信者をマインドコントロールした)オウムの特殊環境に置かれていたことも考慮して彼女の『内心を推し量った』」(報道)として、1審判決(有罪)には無理があり2審無罪判決を支持した。

 (4)江川さんのように裁判をすべて傍聴していないので判決の是非については踏み込むことはしないが、元幹部の証言が「不自然に詳細で具体的」で信用できないというなら、一方被告の17年に渡る逃亡生活は何を物語るのか、「マインドコントロール」、「オウムの特殊環境」だけでその「内心を推し量って」こちらの方は信用できるのか、公平性、公正性に不安はある。

 被告の「薬品は運んだが爆弾の原料とは知らずに、計画も聞かされていなかった」(報道)という主張の信ぴょう性と反比例する17年間の逃亡生活の意味について、こちらも客観的な説明ができるものであったのか知りたいところだ。

 (5)すでに地下鉄サリン事件で死刑判決が確定している元幹部の20年前の事件の証言が「詳細かつ具体的」であることを「不自然」とするのは裁判官の「心証」(impression)の問題のことであり、一方で被告の教団内の「立場」から同事件について「知らなかった」、「聞かされていなかった」ことを信用できるという『内心を推し量った』「心証」はどこからくるものなのか、双方の「立場」(元幹部と使い走り、死刑囚と被告)の違いだけで解明できるものなのかは、これも「不自然」で(unnatural)ある。

 (6)検察にも弱みはある。そもそも菊池直子被告は地下鉄サリン事件がらみで全国重要指名手配されて17年の逃亡の末逮捕されたが、肝心の地下鉄サリン事件では証拠不十分で不起訴となっている。

 組織実体がよくわからない教団がらみの事件でむずかしい捜査の側面はあるが、当時の捜査の精度がどうだったのか、同教団によるサリンテロという前代未聞の事件で何が何でもの「思い込み」(possession)捜査の無理が真相解明の壁となっている。

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今年の話題ランキング。 this year's topics ranking

2015-11-27 20:02:33 | 日記
 (1)恒例の電通による消費者が選ぶ2015年「話題・注目商品ランキング」(10/31~11/2調査)は1位が「爆買い」で2位が「錦織圭」に「ラグビーWC2015年日本代表」が同位で、あとは「マツコ・デラックス」(4位)、「火花(又吉直樹)」(5位)と続いてベスト10に「北陸新幹線」、「自治体プレミアム商品券」などが名前を連ねている。

 政治の話題は対象外なのかベスト10に入っていないが、本来なら安倍政権の「安保法制の強行成立」が強く印象に残る今年だった。憲法学者、国民の多くが憲法違反だと主張している中で、政治は政治家がやることと無視して通常国会を9月末まで最長記録の会期延長をしての衆参強行採決の混乱の中での成立劇であった。

 (2)その安倍首相が国際会議などを通して中国の南シナ海の岩礁埋め立ての領土拡張主張による海洋進出に対して、中国に国際法の遵守を求める(これはこれで当然の論理)と言う国内対応とは正反対の厚顔無恥にはあっけにとられる。

 あと調査期間から見て、今年のノーベル賞同時授賞決定の医学生理学賞授賞の大村智さんと物理学賞授賞の梶田隆章さんは、昨年の物理学賞授賞の3名に続く日本の快挙で日本の先端的科学技術研究の高さを示すもので象徴的な出来事であった。

 (3)経済では東芝の歴代3社長による粉飾決算まがいの不正行為に東洋ゴムの耐震、旭化成(建材)ほかのくい打ちデータ改ざん、流用と名の通った企業がらみの企業倫理欠如、ガバナンス不在が相次いでブラック企業など暗い話題が多く、経済界、経団連は安倍政権の政労使会議、官民対話による政治主導の中で賃上げ、設備投資を強く要請されて、これまで以上に存在感をなくして安倍政権の「下請け」に姿を変えてしまった。

 これらがランキング上位に入っていなかったのは意外であったが、今の小市民的国民意識をよくあらわすものだ。

 (4)同ランキングでは中国観光客などによる「爆買い」が社会構造まで変えてしまう威力で注目された。低迷が続いていたデパートなど流通業界ではこれで一気に回復基調をもたらして、東南アジア購買者向けのサービス強化(通訳、ネイティブ表示)、免税コーナーがどこでも見受けられるようになって社会構造まで一変させる爆発ものだった。

 (5)スポーツでは2015年ラクビーWCでの日本代表の活躍は、ラグビー後進国日本がチーム実力がそのまま結果にでる(番狂わせが少ない)ラグビーで1次ラウンドで過去に優勝経験のある強豪国南アフリカ代表に勝利して上位3チーム同列の3勝1敗となって、歴史的な活躍成果を示したことは予想もしない記録すべき快挙となった。

 (6)冒頭のランキングタイトルに注目商品とあるように、しかしベスト10に入ったのは10位の「instagram」(無料画像アプリ)ひとつで、そういう意味では今年は商品開発で印象に残るものが少なかったということだ。

 自動車では自動運転機能車の開発競争が激しくなっているが、完成はこれからでまだまだ利用者にもインフラ整備、法整備、安全性も含めてイメージがつかみにくい段階だ。
 ドローンも安倍首相が2020年東京五輪までの配送などの実用化を目指しているが、今年は墜落迷惑事故の方が話題先行となった。

 (7)ベスト10を見ているとこれまでの東京スカイツリーのような耳目を集めたものと比べて総じて際立った注目度の高いものがなく、従来の延長線上の話題に終始しているようだ。

 小市民的国民意識(petite bourgeoisie)として身の回りの生活重視が強く、関心は賃上げに景気回復に集まっており、今年の話題も小粒で平凡なものに終始した結果のランキングだった。

 (8)国際社会はISテロがらみの欧米対ロシアの協力関係緊張もあり、波乱含みではあるが、来年は伊勢志摩サミットも控えて日本としても無縁ではいられない年を迎えることになる。

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違憲状態のあいまいさ。 uncertainty of unconstitutional condition

2015-11-26 19:51:51 | 日記
 (1)昨年12月に0増5減改革で実施された衆院選の1票の格差訴訟は、1票の格差が最大で2.13倍となり上告審裁判で最高裁は「小選挙区の区割りは不平等状態にある」(判決報道)として「違憲『状態』」とする判決を下した。

 最高裁が1票の格差2.0倍を超えない範囲としてきた見解(判例)を示してから、今回で3回連続の「違憲状態」(unconstitutional condition)判決となった。
 違憲状態判決が3回連続となると「仏の顔も3度まで」と甘い顔もしていられない、司法判断もいいかげんはっきりさせてほしいというところが本意だ。

 (2)当事者間でのもめごとを司法がシロ、クロはっきりつけるための訴訟で、違憲「状態」などと曖昧模糊(あいまいもこ uncertainty)な判断を示すこと(しかも3回連続)自体がおかしなことで、三権分立の司法としての自己責任をまっとうしていないということだ。

 そもそも当事者間のもめごとを解決するための裁判訴訟で、しかも3審制の最終確定判断の上告審としての最高裁の判断で「違憲状態」判決とは2重の責任あいまい、放棄の司法判断ということになる。

 (3)「状態」とは行政、立法の政府、国会に対して1票の格差是正への選挙改革努力を求める司法の「配慮」ということだが、三権分立の精神から高度な政府、国会の政治的判断には容易に踏み込まない最高裁の「遠慮」がみられるものだ。

 しかし1審、2審では1票の格差「違憲」判決も出ており、最高裁判断も本質論としては「違憲」だが政府、国会の選挙改革努力を求めるアドバンティッジ(advantege)としての「違憲状態」という判断であり、この本質論から外れた判断は司法の最終確定判断としての最高裁の判決にはふさわしくないものだ。

 (4)「違憲状態」判決が3回連続となれば仏の顔も3度まででもなくて、もはや政府、国会の自助努力に期待することが出来ない証左でもある。
 1票の格差是正を利害当事者の国会にまかせては、できるものもできないのは構造理論上の問題であり、最高裁の「段階的に是正を図ることは現実的な選択として許される」(判決報道)という期待、見解は「現実的」ではない、甘い見方といわざるを得ない。

 (5)確かに温情、人情ある「示唆」に富んだ判決は人の心を揺さぶるものではあるが、今回を含めて「3回連続」で期待に応えないものにまだ「現実的な選択として許される」などとさらに期待を示すのは、是正放置、判決責任放棄のとても「現実的な示唆」に富んだ司法判断とはいえないものだ。

 もはや最高裁判断の本質論としての1票の格差「違憲」判断で国会が抜本改正、是正の上、適当な時期に総選挙やり直しを「求める」(三権分立上)べきだ。

 (6)選挙投票権は国民主権の意思表示の基本理念であり、平等な権利行使が保障されなければならずに、さらに来年参院選からは投票権は18才まで引き下げられることもあり対象人口構造も変わることから、政府、国会は選挙抜本改革を実現しなければならない背景もある。

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