(1)法人税というのは、赤字企業は納めなくてもいいもので不況には強いものだが、40年間法人税を引き上げてこなかった間に日本の企業は自己資産内部留保を555兆円に増大させてきた。世界に類のない政府の国家財政累積赤字1200兆円の半分に相当するもので、安倍政権時代もデフレ脱却の企業の賃上げ財源として内部留保の活用を指摘したこともあった。
(2)大企業、富裕層優遇政策の自民党政権は法人税を引き下げて金融緩和、低金利策で企業活動を下支えして、消費税増税で国民にはしわ寄せをしてきた結果として長引くデフレ不況(リーマンショックの世界的不況要因はあるが)に見舞われて、政策効果があったとはいえない。
その結果が破格の国家累積赤字の半分の企業の内部留保555兆円では、昨今の円安大型物価高に苦しむ国民生活との落差も大きく、政府、自民党としても考えざるを得ない状況といえる。
(3)自民党税調では40年ぶりの法人税引き上げ論が浮上している。岸田首相が防衛費増額、子ども手当拡充を増税で負担する考えを示して、一部にこれがサラリーマン増税(通勤手当の課税など)にまで話が広がると一転して所得税、住民税減税を打ち出して、論理性もない行き当たりばったりの国民には敏感な税問題が関心を集めているが、この対策でもあるのか40年ぶりの法人税引き上げ論の浮上だ。
(4)岸田首相は円安効果による2年続きの税収増を国民に還元するとして減税を打ち出したが、鈴木財務相は委員会答弁で税収増はすでに社会保障負担、国債償還で使っていると説明して立場(岸田首相の政権運営に批判との意見もある)の違いをみせた。
近年の政府、与党は100兆円を超える国家予算を国債発行でまかない、累積赤字を積み上げているが、財政を預かる財務省は財政健全化主義で駆け引きが続く。そこに浮上したのが企業の内部留保555兆円の存在だ。
(5)世界の潮流は大企業、富裕層への課税強化で社会格差の解消に向かい、米英でも法人税増税の動きが主流になっている。これまで政府の国民負担増により落差のある企業経済の好調が支えられてきた不満がある。