(1)北朝鮮に少しづつではあっても変化がみられる。先月、金正恩総書記が露を訪問してプーチン大統領と首脳会談をして、そのまま1週間程度露国内にとどまり、最新鋭の軍事施設などを視察して帰国した。
北朝鮮側の軍事衛星といわれる2度の打ち上げの失敗を受けて、露の衛星技術開発の協力を受けたい北朝鮮とウクライナ戦争での北朝鮮の兵器供与を期待する露側の思いが一致しての金正恩総書記の露訪問と考えられる。
(2)ほとんど外遊をこなしていない金正恩総書記としては、核開発など中国とも微妙な関係となり今では唯一の協力関係国ともいえる露を訪問することによって存在感を示すとともに、長期滞在によって北朝鮮国内の安定ぶりを国内外に示したといえる。
(3)7月に韓国に駐在の米兵が軍事境界線を越えて北朝鮮側に入り、逃亡した事件では、同米兵が韓国で暴行事件を起こして米国に送還される予定だったこともあり政治的逃亡目的でないと考えられることもあって、早期に米朝間の問題を取り除きたい意向からか、今月に北朝鮮側が同米兵の解放を望んでいる(報道)として中国経由で米側に同米兵が引き渡された。
北朝鮮側としては北朝鮮に逃亡した米兵を米国との政治的取り引きに利用することも考えられたが、米朝関係を複雑にさせる前に早期解放となった。
(4)これまで米韓日を威嚇(いかく)して核実験、ミサイル発射を強行してきた北朝鮮が最高人民会議(国会)で「核戦力の発展を高度化する」(報道)と憲法に明記することを決めた。
これまで米国との対立を煽(あお)り、交渉を引き出すために各実験、ミサイル発射で威嚇してきた北朝鮮が国家として「祖国の平和と繁栄を強力な軍事力で保証する」(同)と憲法に明記したことは、米国から「ならずもの国家」と呼ばれてきた無分別で危険な姿ではあるが法規国家への手続きの道も考えられる取り組みとも受け取られる。
(5)徐々にではあるが北朝鮮金正恩総書記の統治構造に自信と変化のきざしも見えてきて、日本の拉致問題の解決交渉に向けて岸田首相の条件のない話し合いに向けても何らかの変化、取り組みがみられていくのか関心を持ちたいところだ。