(1)民間シンクタンク「人口戦略会議」が10年前に将来的に全国で900弱の町村が「消滅する」可能性があるとの報告書(増田レポート)を出した時は、少子化、地方過疎化時代を迎えた人口減少以上に「町村の消滅」という試算データの発表で相当にインパクトのある報告書となった。
(2)今回それから10年を経過して同シンクタンクはあらたに全国で744町村が将来的に「消滅の可能性がある」との報告書を発表した。前回(10年前)報告に比べて消滅規模は減少しているとの結果だったが、それでも全国で744町村が消滅の危機にあるという試算データだ。
(3)これを受けて全国町村会は「地域の努力や取り組みに水を差す」(報道)と訴え、批判した。こういう試算データは地方過疎化をさらに加速するものだとの不安、懸念があるのは理解できるが、現実として避けて通れない問題でもあり、全国町村会が主張するように「一自治体の努力だけで抜本的な改善を図れるものではなく」(同)国、政府をあげて取り組む必要のある「人口減少問題は日本社会の最大の戦略課題」(自見地方創生相)であり、現実を直視しなければならない。
(4)町村でも関西では大阪、京都に短時間で移動、アクセスできるロケーション、自然環境に恵まれた生活の利点を活かして、転入、人口増加に転じているところもあり、地方、地域の特性を活かして地方活性化に向かうところもある。
医療でもオンラインを利用した遠隔機能操作で都市部基幹病院と結び対応する医療システムも稼働しており、情報化、IT社会の利益共有、共生の取り組みもみられる。
(5)政府は先端的技術を使って都市部と地方を結び、活性化、活動性に取り組む事業開発を進める必要がある。東京一極集中は高度経済成長時代に労働力供給の必要性から加速したもので、現在は経済成長時代から安定不況、低成長時代に市場原理が移り変わり、世界でも類をみない少子高令化社会で冒頭のような地方過疎化、町村消滅の危機も指摘される時代だ。
(6)日銀が注目する物価高と賃上げの好循環、岸田首相が提唱する成長と分配の好循環がいわれるが(中間層を厚くする経済政策は必要)、大企業、富裕層に対する課税強化も格差社会の解消には求められて、少子化、地方過疎化とどう向き合い、利益を共有するのか、国をあげて考え、取り組み、進める必要がある。