(1)日銀は独立性がしばしば問題になる。政府の経済、金融、市場政策を有効に実行するためには日銀の金融、金利政策が重要になるためであり、政治の役割上は安倍元首相が述べた「日銀は政府の子会社」偏向発言が象徴している。
(2)日銀の独立性がいわれ、問題になるのは、安倍第2次政権でのリフレ派黒田日銀総裁起用によるこれまでの2倍のカネを市場に供給してゼロ金利政策を実施して、日銀が国債を大量に買い支えて政府の借金財政を支えてきた経緯が象徴的だ。
政府の借金財政を日銀(中央銀行)が支える構図は世界の金融市場からは不安定な国家財政として受け取られて、一旦国債暴落に陥れば国家財政破たんを招く危険性がある。日銀(中央銀行)は国の財政健全化、金利、物価行政、市場経済の監視役として独立性が期待されている。
(3)企業の代表者は企業内の最高会議で決定されて株主総会で承認されて成立するもので、日銀総裁も独立性がいわれるなら日銀内の最高会議で独自に決定すればいいものだが、こちらは正副総裁を含めて国会での所信聴取による同意を経て内閣が任命する。
国会の構成上内閣の長の首相の権限で決まることになり、安倍元首相と黒田日銀総裁のようにアベノミクス推進のための大胆な金融緩和策実施という強い関係性が出てくる。
(4)政治、行政と経済、金融の関係性を考えれば、政府と日銀の方針が対立していては経済、金融効果ははかれないのでやむを得ないところはあるが、国家財政の健全化、金利、物価、市場経済の公正性を考えるなら、政治、政府と日銀には協力関係は必要だが一定の距離感が必要だ。
日本学術会議も学問の自由から独立性がいわれながら、会員は法制上首相が学術会議の推薦により任命することになっており独立性の真髄はみえずに、菅政権では政府に批判的な学者の任命が拒否された。
(5)安倍第2次政権の黒田日銀総裁体制は政府内に日銀金融省、日銀局があるようなイビツな存在となっており、大胆な金融緩和策は円安、株高効果を生んでアベノミクスの大企業、富裕層優遇政策を全面的に支える役割を果たしてきた。
(6)日銀の大胆な金融緩和策はその後高いインフレ率の欧米との金利差から急激な円安、エネルギーなどあらゆる品目の大型物価高を招いて国民生活を圧迫しており、適切に対応できずに副作用が問題となって解決策、出口論が課題となっている。