列車の窓から見えるイタリアの景色に、
「きれいだ きれいだ」
数か月、サウジの砂漠で生活していたからだろう、
「ニッポンは もっときれいだよ」
幕末にアメリカの領事が下田から江戸に出府しなければならなかった、馬子が、
「この先で 馬をおりてください」
「・・・」
意味が分からない、しばらく行くと大きく曲がらななければいけなかった、すると、目の前に、
「雪を 頂いた冨士山」
崇高で気高いスガタ・・・
「ああ これだったのか」
ハリスは理解した、貧しいニッポンの馬子は、これを言いたかったのだ、
「ああ なんということか」
「なんというアイロニイだ」
「この貧しい馬子は 貴族の魂を持っている」
それに対してアメリカの教会の牧師は、
「金持ちを優遇している それが今の風潮になってしまった」
「このツギハギの服の貧しい馬子の方が 高貴ではあるまいか」
ハリスは記す、
「世界の果の小さな貧しい国・ニッポン しかし いつの日か かならずや 世界の一等国になるだろう」