入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     「冬ごもり」 (67)

2020年02月16日 | 入笠牧場からの星空

                    Photo by かんと氏(再録)
 
  風邪が長引いていながら、安気に夜更けの天竜土手などを散歩してもいいのかと、そんなことを案じてくれる人はいないが、それにしても長く続く風邪で、もう半月が過ぎる。しかし、新型のあのウイルスを疑うことはない。冬ごもりの日々で人中に出ることはまずないから、そんな者にあんなのが感染するなら、すでに間違いなく沖永良部から利尻島まで日本中が猖獗を極めているだろう。幸いそこまではいってないが、それにしてもこの時季は風邪を引いている人もたくさんいるはずだし、特に都会に暮らす人は不安だろう。既存のインフルエンザに加え、エライものが流行り出したものだ。
 
 二日ばかり前、気温も春並みということで、思い切って風邪対策の強行手段に打って出た。まず薬局で風邪薬、それと同じくらいする疲労回復用のドリンク剤を買い、しっかりと風呂に入り、ビールもどきと熱燗を飲み、羽毛服を着て布団に入った。着替えの肌着やタオルも忘れず、これでしばらく寝ていれば汗が呆れるほど出てくるはずだった。
 本を読みながら少し眠ったかも知れない。ところがその間、首のあたりに汗をかいたくらいで、呆れるほどの発汗はなかった。歳のせいで以前のように新陳代謝が活発にはならなかったのかと思ったが、しかしそれでも7、8割がた風邪は治った。微熱だった体温は正常に戻り、鼻水、くしゃみは止まった。なぜ完治と言わないかというと、身体が風邪慣れしてしまい、正常な感覚というものがどんなものかを忘れてしまったようなのだ。だから、非常に風邪に対して疑い深くなって、妻の浮気を怪しむ細い眼をした夫のような気持になっているらしい。え、いやいや、新聞広告にそんな話が仰々しく載っていたような気がしただけ。
 アダシゴトはさておき、体調は問題なし、羽毛服には女房並みに世話になった。
 
 昨夜も、また天竜川の堤防を酔い心地で歩いた。今や入笠以外で行ってみたいと思う場所はあそこしかなく、旅の衣をまとう日がいつ来るのかは本人にも分からない。「遊子は帰還を忘れ」るような旅に出たいとは思うのだが。

 かんとさん、やはりそうでしたか。一応アノ字で良いのか疑問に思い検索をかけたら、そこでも「曲」という字が出たので、内容までは確認しないまま使ってしまいました。同じことをしてみたら今度は「極」になっていました。極軸望遠鏡、訂正しお詫びいたします。

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     「冬ごもり」 (66)

2020年02月15日 | 入笠牧場からの星空

  「冬の大三角」         Photo by かんと氏(再録)

 昨夜はいつもより少し早め、10時ごろに散歩に出た。少しづつ月の昇る時間が遅くなってきていて、そのころなら冬の星空を眺めながら歩くことができると期待したからだ。入笠牧場とまではいかないが、天竜川の土手から仰ぐ夜空もなかなかの星夜で、そうなるとやはりオリオン座は冬の夜空を飾る代表的な星座であると得心させられた。それに加えて、堤防の上に立つと大きな北斗七星が行く手の北東の空に見え、柄杓の柄の先に微かな赤い点をかろうじて見付けることができた。牛飼座の主星アルクトゥールスである。
 北斗七星が柄杓の形をしていると教えられたのは子供のころだった。しかし、それがどうも英語のthe Dipperに由来しているのではないかということに気付いたのはそれからかなり後のことだ。もっとも今の子供たちには、柄杓などと言っても分からないかも知れない。神社の境内で手と口を清める時に使うぐらいしか用はなくなってしまっただろう。
 と、ここまで呟いて、ずっと和製の柄杓ばかりを思い描いていたのだが、実際は西洋というより米国の柄杓なわけで、西部劇でそんな物を目にしたことがあるような気がするが自信がない。それでも七つの星の並びが柄杓に似ていると言われ、素直にそう思ったわけだから、きっと和製であれ米国製であれそれほどの違いはないだろう。栓をひねれば水が出るような時代ではなかったころは、水瓶に水を貯え、その水を柄杓で汲んで使った。おおぐまざの北斗七星がthe Big Dipper、こぐま座の北斗七星の方ははthe Little Dipperになる。同じ英語圏でも英国ではthe Plough(Plow)が主流らしいが、意味は牛馬が引く「すき」のことで、しかしこれは柄杓ほどピッタリしない。
 この柄杓の椀の部分を延長した先に北極星があることはよく知られている。赤道儀を使う際は極軸望遠鏡をこの星に合わせなければならないが、そういう知識はあってもまだ自分ではやったことがない。かんとさんやT井さんに調整してもらい、三脚を据える目印を付けて、それで済ませている。
 そして、その反対の柄のその先にアルクトゥールスを主星とする我が牛飼座がある。それを知ったのは、多分本物の牛飼になってからのことだから・・・、もうそれもかれこれ13年にもなる。星々を眺めていると、不思議なくらい歳月の経過に思いが行く。

 来週は雪の予報も出ている。
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     「冬ごもり」 (65)

2020年02月14日 | 入笠牧場からの星空

   オリオン座(M42)      Photo by かんと氏

 今は地球外生命体の発見前夜だと、NHKの深夜の番組に出演した研究者が語っていた。番組では、天文学者だけでなく生物学者などの専門家を集め「宇宙生物学(Astorobiology)」という分野の研究を行う新組織が東京天文台にできたとも報じていた。地球外生命体などと言えば、高度な文明を持った存在をつい連想してしまうが、まだ実際は深海の生物を対象とするような地味な研究のようだ。

 これだけ広大な宇宙に無数に存在する星々だから、その中には知的生命体が存在すると考えるのは、それを否定するよりも自然だと思う。ただし、その可能性を探るドレイクの方程式では、高等生物は自滅するという可能性を導入すると、あまり楽観的な数字が出ていなかった記憶がある。
 ひとつはっきりしていることは、すでに100光年以上の広大な宇宙空間に、われわれ人類の行いは詳らかに発信されてしまっているということだ。恐らく、その多くは恥ずかしくて情けないものばかりだから、仮に人類並みの知性がそれを監視していたとしても、沈黙を守っていて何ら不思議ではない。ただその一方でこれだけ何の反応、兆候もなければ、この範囲の宇宙には、人類並みの知性を有するような存在はゼロである、という可能性も考えざるを得なくなる。
 46億年の地球の歴史の中で、人類らしきの誕生は750万年ぐらい前と考えられている。しかし、狩猟採集のままで終わってしまっても不思議でなかった人類に、たった20万年ばかり前にアフリカで誕生した"異種"が、その後のホモサピエンスの将来を決定づけ、今ではこの地球上の支配者として君臨している。
 億年をかけて生物が誕生し、膨大な時間をかけてわれわれはようやく生まれてきたのに、なぜか地球上には人類以外にここまで進化できた生物はいない。これだけ多様な生き物がいるのに、なぜわれわれだけなのか。2足歩行をし、言語を持ち、道具を使用するような生命体が誕生するのは、地球の例から考えれば途方もなく偶然、特殊で、例外的なことのようにも思える。それにまた、時を同じくして同等もしくはそれに近い文明が出会える可能性などは、宇宙的な時間と文明の寿命を考えたら、ゼロではないにしても確率的には相当に低いのではないかと思う。
 かんとさんの写真に寄せた妄言。あそこ入笠牧場で、星を眺めながらそんな会話も求めたい。

 ようやく風邪が治りつつある。
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     「冬ごもり」」 (29)

2019年12月26日 | 入笠牧場からの星空

     Photo by かんと氏

  星の狩人なら、もちろん要らざる説明だが、それでも、冬の大三角形やオリオン座を実際に見たことのない人のために、かんとさんの助けを借りて少し説明しておきたい。
 
 落葉松の先端が尖った黒い影、その真上に輝いている星が全天で一番明るい星、シリウス(大犬座)。冬の大三角はこれを頂点にして上方に広がり、美しい二等辺三角形を構成する。右斜め上の黄色く見える星に注目しよう。これが、オリオン座の四つ星の一つ、すでに消滅の可能性まで疑われているベテルギウスで、三角形の右の一角になり、もう一つの角はそのまま視線を左へ水平に移動していくと見える白い星、これが小犬座のプロキオン。 
 これで冬の大三角形が分かったと思う。かんとさんの説明によれば、その逆三角の底辺の中間あたりの赤っぽい微光の集合がバラ星雲で、そこを冬の天の川銀河が流れている、と説明してくれている。銀河は夏は左方向へ、冬は右方向へと変わって見える。
 今見たベテルギウスを四角形の左上と考えれば、オリオン座やその三ツ星、またオリオン星雲も分かりやすいと思うが如何か。この星と斜め下方に対抗する星、この写真ではシリウスに負けないような明るい光を放つ星だが、これがリゲル。オリオン座の右下の一画になり、この星は冬のダイヤモンドを構成する6個ある星の一つでもある。
 バーナードループも写っているが、ムーこれはカテゴリー別の「入笠牧場からの星空」で見てもらうことにしたい。

 星空の魅力は、美しさだけでなく、その神秘性にもあるのだと思う。先ごろ、初めてブラックホールの撮影に成功したことが、大きなニュースになった。その光さえも閉じ込めてしまう天体、その暗黒の天体が、しかし太陽の65億倍もの質量を持つと報じられては、度肝を抜かれ、言葉を失ってしまう。10倍、100倍なら何とかついていけるかも知れないが、太陽の65億倍である。それも巨大な星が、凄まじい密度に収縮した結果で、といっても太陽から海王星までの距離の9倍近い大きさ(400億キロ)、そんなものが大宇宙にはゴロゴロと存在しているのだろうか。怖しい話だ。
 というふうに、星空を眺めることは、われわれの日常をはるかに超えてしまった世界を垣間見ていることになるのだろう。138億年であり、ウン億光年の世界をである。たった100年すら生きられないわれわれが。

 かんとさん、ありがとう。海老名出丸さん、今回の星景写真はどうでしたか。

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     ’19年「冬」 (2)

2019年11月08日 | 入笠牧場からの星空

         Photo by かんと氏

 ′17年の2月14日「冬ごもり(34)」でも、かんとさんのオリオン星雲の写真を取り上げ、山口誓子の「寒き夜の・・・」について呟いていた。何故そんなことが分かったかというと、きょうもこのオリオン座の写真からその句が頭に浮かび、昨日の「千人平」と「千軒平」の記憶違いのようなことがあってはいけないと、PCで「山口誓子 寒き夜の・・・」で検索してみた。そしたら驚いたことに、この呟きまでがそこに紛れ込んでいた。
 どうもオリオンとくれば、決まってこの句が連想される。そういう思考回路ができているらしく、しかしそうなると、きょうは別のことを独り言ちらなければならない。

   往き逢ひしときより枯野又遠し  ―― 誓子

 そうして彼は、冬空に輝くオリオンを眺めたのか、などと想像した。まあ、似たような思いをしながら、冬ざれの山道を帰ってきたこともある。彼のような佳句はできなかったが。
 
 オリオン座の主星ベテルギウスは超新星で、いつ爆発を起こしても不思議ではないらしい。すでに、爆発したかも知れないと言う人さえもいる。距離400光年ぐらいと記憶していたら、10年くらい前に642光年に変更されたと知った。すでに爆発していたならば、それを目にする可能性はゼロではないが、今爆発してもその光景を目にできるのは642年後のことになる。
 そんな遥かな未来を予想することはできないが、宇宙は万年先のことも空想の相手になってくれる神秘的で、貴重な未知ではある。

 夕暮れが近付いている。もう幾日になるだろう、夕焼けを眺めながら帰るようになってから。長く続くことを望んだ秋も、ついにうしろ姿を見せ始めた。

 そろそろ快適な小屋の方をお勧めしたい。
 営業案内 「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」およびその(2)です。下線部をクリックしてご覧の上、どうぞご利用ください。

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