この老人は、することがない。見つけなければならない。なかなか見つからない。見つからなければ、ぼんやりしていることになる。
老人がみなそうやっているわけではあるまい。この老人は、生来が怠け者。それが輪を掛けることになる。
今日も庭に出て、庭の草取りをした。小さな腰掛け椅子に座って、移動しながら、右手に農具を掴み、草を取る。それだけのこと。
もう少し世の中に貢献できることをしたらどうだ、と自分を諫めるけれど、効果なし。
生きている時間に変わりはない。若くても老いても、多くの他者によって、善意によって、生かされているその価値ある時間に変わりはない。
なのに、この老人は世の中には出ていかない。貢献しない。一人でいる。山里に隠れるようにしてぼんやり過ごしている。